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色をめぐるポリティクス「ランドセル・都知事・大統領選挙」三木学

www.j-cast.com

togetter.com

 

 

3月に「赤色のランドセルが欲しい」という男子を持つ母親の相談が質問投稿サイトに寄せられたこと対して、今月になってツイッターで広がり、ジェンダー論に発展している。

 

その背景に、最近ではランドセルもかなりの色のラインナップがそろって、かつてのように、男子は黒、女子は赤という選択肢しかなった状態からかなり変わっているということがある。とはいうものの、さすがに、赤を選ぶ男子はほとんどいないようである。

 

これは性差を前提とした大人の押しつけであり、個人の自由に委ねられるべきである、という主張はたしかにそうだろう。一方で6年使用することが前提であり、いじめられたりする可能性があることを思えば、将来的な懸念を想定して、変更を促す親の気持ちも理解できなくはない。

 

今日においても、赤が女性、青が男性という記号は日本社会の至るところにある。トイレのサインなどはその典型であるが、色によるジェンダーや人に対するグルーピングが、差別につながるという側面はあり、その点では日本は遅れているといわれてもしょうがない。

 

ただし、赤が女性、青が男性に当てはめられるのは無根拠なことでもない。ニューカースル大学の神経科学者、アニャ・ハーバートとヤズ・リンが、男女の色の嗜好を調査した結果、女性は赤系を男性は青系を好むことが報告されている。それは人種が異なっても同じ結果となり、ジェンダーによるレッテルを意識する以前の乳児を対象にしても同じ結果だったという。つまり、男女の色の嗜好は、生得的なものであることになる。

karapaia.livedoor.biz

 

その根拠として、旧石器時代の男女の役割分担を挙げているが推測にすぎず、後天的な影響も複合的に関係しているということで曖昧さを残している。また、性同一性障害色覚異常者に対する調査は今後の予定であるという。

 

赤については、女性が身につけるとセクシーに見え、男性が身につけると高いポジションを持っているように見えるという調査はある。顔色によって、体調や体力を把握するためにも、赤の変化については、極めて敏感であるという説があるが、青についてはまだまだ科学的な調査は進んでいない。

 

とはいえ、実践レベルでは、大統領選などで、力強く見せるために赤を使ったり、冷静に見せるために青を使ったりすることは、ケネディの時代からカラーコンサルタントが登場し戦略的に行われている。先日も、大統領選の候補者討論会で、共和党のシンボルカラーである赤のスーツを、民主党ヒラリー・クリントンが身につけ、民主党のシンボルカラーである青のネクタイをトランプが身につけたことで話題になっていた。クリントンは病み上がりであったために健康的に見せる配慮であろうし、感情的な発言の多いトランプは大統領に必要な資質である冷静さを演出するためであろう。

 

今日のにおいても、ファッションなどでは、女性は赤系、無彩色なら白、男性は青系、無彩色なら黒を着るケースが多い。そうでなければ、女性が青系を付ける場合は、明度の高いパステル調の水色や、彩度の高いビビッドな青になる。男性が赤を付ける場合は、明度・彩度を低くして、茶色に近くなったりする。それを逆手にとったコム・デ・ギャルソンのようなデザイナーもいるし、もちそん、そうでない嗜好の人々も多いのは言うまでもない。

 

赤と青という、反対色に近い色が、男性と女性のシンボルカラーとしてつけられてきた背景には、先天的要素に加えて、文化などの後天的要素が当然からんでいるだろう。一方で中性色と言われる緑などが、政治などにおいても、第三の道、第三極のシンボルカラーで使われることが多いのも興味深い。先日の都知事選で緑を旗印にした小池百合子もその例だろうし、世界中に広がっている緑の党の例もある。

 

色の性質が、ジェンダーや政治に反映され、議論を呼んでいるのは興味深いし、それについて人類の起源の役割分担にまで根拠を求めるのも、色が太古から現在まで嗜好性を越えて、政治性を持っている証拠だろう。

 

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田中和人|Kazhuhito TANAKA 《after still》

今回は、田中和人さんのスライドショー作品をご紹介します。
田中さんは、写真によって、写真と絵画・立体との関係、具象と抽象の境界を探求する作品で知られています。
今回は、抽象表現主義、カラーフィールドペインティングの先駆者であり、2011年当時オークションで最高値を付けたことでも知られる、クリフォード・スティル(Clyfford Still)の絵画のオマージュである作品《after still》をスライドショー作品にしています。
タイトルから、スチール写真(still picture)とクリフォード・スティルの後(after)という二重の意味に読めます。
《after still》は、カメラを使わず、スキャナーの上で複数の色紙を恣意的に動かすことで、クリフォード・スティルのようなギザギザした色面を生み出すもので、再現性が不可能でありながら、類似した平面が生成されていきます。
スキャナーと色紙と陰影の加減により、微妙な立体感や質感が生み出されており、まさに写真と絵画・立体、具象と抽象の境界線上のある作品だといえると思います。
田中さんはスライドショーにするにあたり、その不安定な色面に合すかのように、不協和音を採用すると同時に、画面の切り替えをディゾルブを使うことで、新しい混色と形態を生み出しています。
是非ご鑑賞ください。

shadowtimes編集部 

田中和人(写真家、アーティスト)

http://kazuhitotanaka.tumblr.com/

写真により色彩、形態、視覚を問い直す数多くの抽象作品シリーズを発表している。「写真と絵画や彫刻との関係」、そして「抽象と具象の境界」を探求する表現方法で知られている。モダニズム〜フォーマリズムの成果を批評的に継承し、写真というメディウム潜在的な可能性を探ることで、今日的な視覚表現を独自のアプローチにより生み出している。 この度、カメラの前に金箔をかざし、金箔の透過光である青の光によって撮影することで、意図的にピクトリアリズムとの接近を図りながら、写真としての光に向き合ったシリーズ《GOLD SEES BLUE 》(2009)、また、画家クリフォード・スティルへのオマージュであり、スキャナー上で複数の色紙を移動させたスキャンデータを元に制作したシリーズ《after still》(2011)を元に2種類のスライドショーを制作した。

 

プロフィール

1973年埼玉県生まれ。1996年明治大学商学部卒業後、会社勤務を経て、渡米。2004年School of VISUAL ARTS(ニューヨーク)卒業。主な個展に「pLastic_fLowers」Maki Fine Arts(東京、2015年)など。2011年TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARDグランプリ受賞。コレクションにThe amana collectionがある。

 

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武田陽介|Yosuke TAKEDA 《Stay Gold》

今回は、様々な光の現象に着目し、クールな視線と洗練された構図で日常を切り取るストレート写真で知られている注目の写真家、武田陽介さんのスライドショー作品をご紹介します。

武田さんは、代表作《Stay Gold》を元に、自分の鼓動のBPMを測定し、ハードビートに合わせて、スライドショーを展開しています。

ハートビートに合わすことによって、「凍れる時間」「凍れるメディウム」「凍れる身体」である写真を、今までにない方法で「蘇生」していると言えます。

武田さんの光の現われを観察する冷徹な視線に、ビートによって身体の鼓動と熱さが伝わり、身体の延長としてのカメラと、人間の知覚と分離したメディウムとしての写真がつながるとともに「再生」し、新たな知覚を促しています。

写真、ビートともに、デジタル時代のスライドショーにふさわしい洗練された作品だと思います。
是非ご鑑賞ください。

shadowtimes編集部

武田陽介|Yosuke TAKEDA 《Stay Gold》

武田陽介(写真家、アーティスト)

http://yosuketakeda.com/

ストレート・フォトグラフィーでありながら、抽象絵画のような構図や平面性を兼ね備え、それゆえ日常の雑景からやや遊離した雰囲気を湛えている作品で知られる。発表されている作品の全てがデジタルカメラによって撮影されたものであるが、それらは暗室における「光を定着させる」という経験をふまえて制作されており、写真の普遍的原理である「光の現れ」を追求している。被写体の多様性は、そのまま「光の現れ」の多様性であり、それぞれの作品、あるいはそれらの組み合わせには光の反響と増幅、あるいは写真というメディアを俯瞰視する類の特徴を見つけることができる。光学現象の1つである「フレア」を被写体とするシリーズが特に知られており、これらは光を捉える「手段」であるレンズの存在も含めてイメージに定着させるという試みである。

 

プロフィール
1982年愛知県生まれ。2005年同志社大学文学部哲学科卒業。近年の個展に、「キャンセル」 3331 GALLERY(東京、2012年)、「Stay Gold」 タカ・イシイギャラリー(東京、2014年)、「Arise」 タカ・イシイギャラリー(東京、2016年)など。サンフランシスコ近代美術館、スペイン銀行に作品が所蔵されている。

 

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