「染料と緑 」三木学
染織家に、一番、染色しにくい色は何かと聞いたら、「緑」だという。たしかに、染料で直接、緑色になる素材はほとんどないのである。これほど自然に緑が多いのに、染料としては少ない。だから、藍と苅安(黄色系の色材)をかけ合わせて緑色に染める。
このような混色の理解は日本は非常に早くから発達していた。その頃、ヨーロッパでは混色は行われていない。理由は混ぜること自体が不純だと捉えられてきたからである。そもそも、緑色の印象も良くはなかった。緑は森を連想させ、中世においては恐怖の対象でもあったので、たいてい怪物は緑色をしている。それは現在のハリウッド映画などでにも引き継がれている。
そういう意味でも、日本は三原色など、混色の原理を発見してもおかしくはなかった。ヨーロッパよりも、青と黄色とかけ合わせた緑や青と赤をかけあわせた紫などは、かなり古くから作られていたからでる。
どこかの時点で、すべての色は3~5色くらいのかけ合わせで再現できるという結論に達してもおかしくはなかった。(光の三原色が発見されたのは19世紀である)
そこに至る科学的思考を残念ながら日本では持てなかったのである。
参考文献