「色彩球という宇宙、色名という星」三木学
ルンゲ《色彩球》1810年
Runge’s Farbenkugel (color sphere)
Philipp Otto Runge - Wikipedia, the free encyclopedia
マンセル《色彩球》1900年
Munsell color system - Wikipedia, the free encyclopedia
ルンゲをはじめとして、色彩球(色立体、色空間)を考案した色彩研究者たちは、色をもう一つの地球あるいは宇宙と見ていたことだろう。連続性があり常に変化する色彩は独立してその意味を持つのではなく、関係性の中でこそ存在する。そして、知覚の中では色彩はパラレルワールドとして存在する。
色空間が宇宙空間だとしたら、色名は星のようなものである。大きな星もあれば小さな星もある。また星が固まっているところもあれば、少ないところもある。我々は風景に潜む色彩宇宙の中に色名の星を発見したとき、色名を想起するのだ。
写真から色名を抽出するには色名の範囲を決めなければならない。しかし色名の範囲はそれぞれ異なるし、その境界領域も曖昧である。ただし知覚的に均等な色空間であるL*a*b*表色系を使って代表値と色差を決定することで色名の球体(色名色空間)を作ることで写真に含まれる色名の割合を抽出できる。
「フランスの色景」では、その方法でフランスの日常風景を撮影した写真から、そこに含まれるフランスの伝統色名と日本の慣用色名の割合を比較分析している。ただし、厳密には色名ごとに範囲や形は異なるし、それを調べるのは相当な労力と技術がいるだろう。
色彩宇宙は広大な闇のようなものでもある。色名の星がいくら多くても、色彩宇宙が星で満たされることはない。それぞれの星は恒星で光を放っている。光の届かない暗闇が色名がない地帯になる。そのことをノーネーム・ランドという。
広大な色彩宇宙に光る知覚の星や星雲こそが色の名前を持つ。それは星に名前がつくことに似ているのだ。
参考文献
色彩学貴重書図説―ニュートン・ゲーテ・シュヴルール・マンセルを中心に
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- 作者: J.W.V.ゲーテ,Johann Wolfgang Von Goethe,木村直司
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