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「美は数理的に解析可能か?」三木学

アート 色彩 写真 フランスの色景 音楽

Nikon|光と人の物語|“光”を描いた画家たち ~数理で見る名画~

ミュージアムIT情報:影山幸一 03年9月

 

美が数理的に解析可能か?というのは、科学者にとっての一つの関心事項だろう。「美しさ」という、高次の脳の判断について、数理的な法則があるはずだと科学者が思ってもおかしくはない。

 

それはどちらかと言えば、音楽において顕著だ。音楽と数学、天文学が古代ギリシアには深いつながりがあり、古代ギリシアの哲学者、ピタゴラスが考えたとされる音律(3:2の周波数比の関係にある音程を基に作られる音律)があるくらいだ。実際、音程に関する調和は、周波数が整数で割り切れるかどうかが一つの基準になっているし、そこに美や快があるのも確かである。ただし、かつて不協和音と言われたものが、音楽が拡張するにしたがって、心地よいものへと変わっていった経緯もあるので、そのような数学的な美だけで人間の心が「割り切れる」ものではない。

 

とはいえ、そのような数学的美しさが、絵画にも見られるのではないか?と思うのは自然な疑問だろう。少なくとも色彩調和は、音楽のハーモニーを参照して考えられてきた歴史がある。ニュートンが、プリズムによって分光し、単色光の配列からなるスペクトルを発見したとき、連続性のある配色を7色に分けた。ニュートンが実際に7色に見えたかどうかはわからない。ただし、スペクトルには音の周波数と類似性のある規則性があると考えたため、恣意的に7色にしたのだ。

 

実際には虹と同じ原理であるスペクトルは、文化圏によって数は異なるし、色の各波長も音楽の和音のような整数で割り切れる関係ではない。しかし、音楽の調和理論は、色彩の調和論のモデルであり続けた。

 

色覚は音よりもはるかに複雑なので、現在のところ普遍的な調和というのはほとんどなく、文化圏によってかなり異なるということがわかっている。しかし、西洋圏内においては、ある程度共通した調和感があると思われる。

 

特に、19世紀に入ってからは、シュブルールらの色彩研究によって、色相環の反対色である補色が及ぼす効果が理論化されたり、網膜と対応する三原色が発見されたりしたことで、より科学的に絵画が描かれるようになったといえる。それがどのくらい、数理的に規則性があるかについては、数理工学を専門とする色彩学者の小林光夫らによって幾つかの傾向が明らかになっている。

 

絵画に含まれる色を色空間に分布させ、そこに配色の法則を見出す方法は、絵画における配色が視覚化され、色が絵画に及ぼす影響が一目で理解できることにおいても効果的であるといえる。CIEの色空間ではないが、コンピュータのRGBを使った色空間に絵画に含まれる色を分布させる方法は、メディア・アーティストの藤幡正樹によって提案されており、当時のMACのプラグインソフトとしても制作され話題となった。藤幡の方法は、カラーヒストグラムとも言われる。通常、ヒストグラムは2次元だが3次元のヒストグラムだといえる。

 

「フランスの色景」における色空間の分布は、マンセル表色系を利用している。それはマンセル表色系が、JISにおいて色名と対応しているからであり、色彩調和理論もマンセル表色系で説明できることが多いからである。しかし、絵画や写真の種類によって適した色空間はあるだろう。

 

ただし、すでに評価されている絵画などの色彩的な法則性を見出すことはある程度可能だと思われるが、見出した法則性から新たな美を作り出すのはそれほど簡単ではない。第一、評価されるまでに時間がかかったもの多くあり、「美しさ」は人間の文化的な慣習が大きな要素を占めるからである。

 

それでも、絵画の奥に潜む法則性を発見するのは無意味ではないだろう。画家や写真家も意図していない法則が見つかることはあるはずで、それは人間の無意識や脳の謎を発見する手がかりになるはずだ。

 

参考文献

音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生まれたか (ブルーバックス)

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色彩調和論 (色彩科学選書)

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カラーハーモニー

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カラー・アズ・ア・コンセプト―デジタル時代の色彩論

カラー・アズ・ア・コンセプト―デジタル時代の色彩論

 

 

色彩用語事典

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フランスの色景 -写真と色彩を巡る旅

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