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「フリーペーパーの行方-なくさないために」三木学

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【 ART BRIDGE 】 | ABI-REPORT

先日、京都に港千尋さんが来られたときに、二冊のフリーペーパーを頂いた。一冊は、あいちトリエンナーレ2016のコンセプトを元に、様々な引用とイメージによって、構成された冊子「AT PAPER COLORS AND WORDS」で、もう一冊は、港さんが代表を務めているArt Bridge Institute の冊子「ART BRIDGE 」創刊号である。

 

Art Bridge Institute (ABI)は、全国各地で取り組まれているアートプロジェクトや、アートの連携活動、生きる技術としてのアートの今をリサーチするNPO法人で、港さんが代表を務めている。

 

最近、アートプロジェクトや地域活性化のプロジェクトが盛んになって、フリーペーパーも指数関数的に増えている気がする。その日も、港さんは京都のアートスペースにあった無数のチラシやフリーペーパーを見て、膨大な数のイベントが日々行われていると指摘していた。

 

Art Bridge Institute (ABI)は、まさにそのうように、全国各地で開催されている、アートプロジェクトをリサーチし、ブリッジしていくことが目的の団体である。ブリッジするのは、日本だけではなく、アジアや世界にも広がっているのだが、各地で活動している人々との対談やワークショップをまとめた冊子は、かなり厚みと膨らみのあるものになっている。

 

それは中身の話だけではない。大きいのである。なんと見開きB3サイズという、フリーペーパーとしては例外的な大きさである。ここまで大きいと、文字や写真を読もうという努力するよりも、文字や写真の方から飛び込んでくる感覚に襲われる。文字や写真はあるサイズを超えると、情報から物質へと変化するのだと思わされた。

 

あいちトリエンナーレ2016の冊子「AT PAPER COLORS AND WORDS」も負けず劣らず大きい。縦が若干小さいくらいである。港さんは、写真を見開きで大きくしたかった。タブロイドサイズまでもっていきたかった、と言っていた。その意図は成功していると思う。イメージもサイズが大きくなることで、物質性とともに身体性を帯びる。

 

アートプロジェクトや地域活性化のプロジェクトも、微分化しており、包括的な運動が見えにくくなっているように思う。そして、微分化した広報手段としてのチラシやフリーペーパーは持ち帰られてもすぐに捨てられてしまうだろう。つまり、滞留時間が短いのである。 

 

港さんがプロデュースした冊子はまずなくすことはないし、見つからなくなることもない。言葉も写真も厚みがあるので、パラパラとめくりたくなる。フリーペーパーの役割については、再考すべき段階に来ており、港さんの実践は非常に示唆を与えるもだと思う。関心のある人は是非、配布先に問い合わせてもらいたい。

 

a-b-i.info

 

参考文献

 

日本とは何か  日本の歴史〈00〉

日本とは何か 日本の歴史〈00〉