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思い込みは見え方を変える―「レインボー・フラッグは何色か?」三木学

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一つ前の記事で、アメリカ人にとって、虹は6色であるから、性の多様性を示すレインボー・フラッグも6色であると書いた。幾つかネットに上がっている旗を数えたのだが、やはり6色であった。

 

と思ったら、日本語版ワイアードのリード文に以下のように記載されていた。

2015年6月26日(現地時間)、連邦最高裁判所は、アメリカの全州で同性婚を認める判断を示した。彼らコミュニティの文字通り旗印となる七色の旗は、どのような意味をもつのか。どのようにつくられたのか。伝説の人ハーヴェイ・ミルクが、どんな示唆を与えたのか。

wired.jp

 

 

僕はかなり驚いた。アメリカ人の記者が、「七色の旗」と書いたのだろうか?アメリカ人にとっても虹が七色だという認識なのだろうか?いや、旗の虹色を何度も数えたけど、6色にしか見えない…。

 

そして、原文を確かめてみることにした。

www.wired.com

 

そうすると、件のリード文そのものがなかった。つまり、リード文は日本人の記者が書いたのだろう。日本人にとったら、虹は当然七色であるので、世界中の先進国も七色だと勘違いしたのだろう。おそらく疑いもなく彼らコミュニティの文字通り旗印となる七色の旗」と書いてしまったのだ。「虹の旗」と書けば何も問題はなかった。

 

ワイアードの記者だから、英語はある程度堪能なのだろう。それでも、色に持つ観念や認識は母語の文化の強い影響を受ける。この記事自体は、レインボー・フラッグが生れた経緯について、発案者のエピソードを書いたものである。虹の色の数はそれほど重要ではない。それでも、このような誤解に基づいて記事が書かれてしまうのは好ましくないだろう。

 

LGBTと言われる性の多様性は当然、重要なことである。レインボー・フラッグはその象徴としてもふさわしい。ただ、虹の色の数が、文化によって違う多様性を持っていることも覚えていて損はない、という指摘はまさにこういうことなのだ。

 

参考記事

 

shadowtimes.hatenablog.com

 

参考文献

 

日本語と外国語 (岩波新書)

日本語と外国語 (岩波新書)