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アートの価値を上げるゲーム「The Gallerist」三木学

 

gigazine.net

「アートは価値を上げるゲームである」そう書くと、反論される方もいるだろう。もっと社会に対するメッセージや心の問題を扱う崇高なものだと思っている方も多いに違いない。確かにそういう面もある。

 

 

一方で、アート作品を商品と考えた場合、これほど複雑で難しい商売もないだろう。何せ原価はあっても、明確な定価は存在しないし、存在したとしても同じ作品が評価が上がることによって上昇したり、あるいは下降したりする。ギャラリストは、このような複雑な商品を扱い、したたかに評価を上げ、価値や価格を上げていく。それはまさにゲームの様相を帯びる。

 

それをそのままゲームにしたのが、「The Gallerist」であり、Kickstarterで資金を調達し製品化されるという。

http://gigazine.net/news/20150703-the-gallerist/

www.kickstarter.com

「The Gallerist」では、ゲームプレイヤーである4人のギャラリストが、ギャラリーの顧客である「投資者」、「VIP」、「コレクター」からお金と評判を得ていき、メディアセンターでプロモーションを行う。そして、国際マーケットで高い価格を得るためのゲームだ。その過程でオークションでの販売や、キュレーター、アートディーラーなどの参入もある。

 

 

これはまさに、アートと価値を巡るゲームである。日本人の多くは、このようなゲームの外側にしかおらず、美術館や芸術祭で鑑賞するくらいしか接点はないだろう。

 

これはアートの一部を切り取ったものであるが、厳然として存在しているアートビジネスをわかりやすくゲームにしたに過ぎない。美術館に展示されているものがアートなのだ、と逆説的に提示したのはデュシャンであるが、アート市場でビジネスとして取引が行われるのがアートなのだ、という言い方もできるだろう。

 

近年のコレクターでは、投資家も増えている。コクションを売買しながら、価値を高めるコレクターもまた、アート市場のプレイヤーなのだ。

www.bloomberg.co.jp

アートの過度な産業化や投機化は好ましいものではないが、どちらにせよ、時間を経れば必然的に正しい評価になり、みんなが欲しいものは価格が上がるし、欲しくないものは価格が下がる。それはアートも例外ではないということを理解する意味でも、啓蒙的なゲームかもしれない。

 

参考

 

shadowtimes.hatenablog.com