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なぜ日本人はボール回しが好きなのか?-「蹴鞠とサッカー」三木学

蹴鞠は、日本の独自の遊戯だと思っている人がいるかもしれないがそうではない。多くの文化と同じく、中国から渡来してきたものだ。しかし、中国と日本の蹴鞠はルールが変わっていく。

 

 

Wikipediaによると、紀元前300年以上前の中国の斉(戦国時代)の軍事訓練にさかのぼるとされる蹴鞠は「漢代には12人のチームが対抗して鞠を争奪し『球門』に入れた数を競う遊戯として確立し、宮廷内で大規模な競技が行われた」とあり、現在のサッカーに一番近いかもしれない。

 

その後、蹴鞠は「球門」(ゴール)の形式が変わるなど、多様化され、「宋代にはチーム対抗の競技としての側面が薄れて一人または集団で地面に落とさないようにボールを蹴る技を披露する遊びとなった」という。それは今日のリフティングに近いといえよう。軍事訓練の一環であったサッカーのような蹴鞠が、個人演技であるリフティングのように変わっていった経緯は面白い。

 

日本では、600年代に仏教などとともに輸入されたという。中大兄皇子が蹴鞠をしている際、落とした履を中臣鎌足が拾ったことは、日本書記にも書かれている有名なエピソードである。当時はサッカーやボロのような要素があった可能性はあるが、平安時代にはすでに、リフティングのような今日の蹴鞠に変化している。

 

その頃からの日本人の気質なのか、ボール回し、ポゼッションが大好きで、ゴールにボールを入れるよりも、ボールを持ち続けることの方が目的化しているように思えることがある。

「世界がどんどん走るサッカーをしているのに、南アフリカW杯以降、日本ではポゼッションという言葉が流行ってしまった」杉本龍勇 (岡崎慎司の専属フィジカルコーチ)

http://number.bunshun.jp/articles/-/823719

 

岡崎慎司の専属フィジカルコーチの杉本龍勇は以下のように分析している。

日本人はスピードを落とせばスキルの高さを発揮できる。しかし、速度を上げると途端にそれができなくなる傾向がある。だから僕は常々『日本代表はカウンターができない』と言っているんです」

 

「単体の動きに関しては、日本人は欧米人より格段に器用なんですね。ところがジャンプしながら何かするといった2種目、3種目の動きを織り交ぜるとなると日本人の器用さは途端に落ちる。サッカーもそうで、止まった状態ではうまいんですが、動きながらボールを扱うことに関しては落ちてしまうんです」

 

速度とテクニックを両立できないのが日本であり、パス回しをしながら、ゴールを狙うのができない、というわけである。つまり、日本人はサッカー場で蹴鞠をしている状態だといえるだろう。

 

その解決法について、杉本龍勇は走り方を挙げていて興味深い。初速を上げることと、蹴らない(踏んばらない)走り方にその鍵があるそうだ。この走り方はヨーロッパで活躍する一流のプレイヤーはみんなで出来ているらしい。これは日本人と西洋人の筋肉の質の違いも関係しているだろう。

 

日本人は西洋人に比べて、体の前面の伸筋群が強く、背面の伸筋群が弱い。それが椅子の長時間座れなかったり、腰痛になりやすかったり、短距離競走が遅い一因ともされている。そのような筋肉の構成の問題と、ストレスに弱い遺伝子的な問題と両方があるだろう。

 

そのような弱点を直視した上で、蹴鞠からサッカーに変わることが、日本のサッカーが強くなるポイントかもしれない。

 

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