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もう一つのレガシー「2020年東京五輪のエンブレム」三木学

casabrutus.com

 

新国立競技場の前代未聞のデザインの見直し、東京都の観光ボランティアのユニフォームなど、ここのところオリンピックとデザインが一般の人々を巻き込んで話題の種になっている。そんな中、「東京五輪エンブレム」が発表された。104点の応募から佐野研二郎氏のデザインが選ばれたそうだ。何度も目にしている桜の首飾りのようなエンブレムがそうだと思っていた人も多いと思うがそうではないらしい。

 

 

新国立競技場や東京都の観光ボランティアのユニフォームに比べて、今回も相変わらず批判はあるものの、やや好意的意見が優勢のように思われる。一方で、Jリーグのログに似ているという指摘もあるようだ。

matome.naver.jp

東京五輪エンブレム発表に会場どよめき えっJリーグ!? : 社会 : スポーツ報知

また、1964年の東京オリンピックの時の亀倉雄策がデザインしたエンブレムを連想した人もいるようだ。それもそのはずである。亀倉雄策のデザインを継承する意図もあったらしい。また、佐野研二郎氏は、JAGDA(公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会)の2015年の亀倉雄策賞を受賞しているという縁がある。

 

なんと受賞コメントでは、

「亀倉雄策の仕事で一番好きなのは1964年の東京オリンピックのエンブレムだ。シンプルで力強く、唯一無二のデザイン。いつの日かこのようなシンプルで骨太な仕事がしてみたい、と思うようになった。ニッポンを、世界を、あっといわせる仕事。一生に一度でいいからそういうデザインをしてみたい。シンプルであること。明快であること。太くあること。Simple. Clear. Bold. ある日から僕のデザインの指針となった」

 

と述べている。本人も2020年の五輪のエンブレムに採用されたいと思っていただろうが、本当に受賞されるとは思ってなかったかもしれない。まさに本懐を遂げたという感がある。

JAGDA:第17回亀倉雄策賞 佐野研二郎

 

今回の「2020年東京五輪のエンブレム」のデザインについて、個人的な感想としては、王道なものが選ばれたという印象であった。黒がダイバーシティ、右上の丸い円はハートの鼓動、上下の金と銀は、メダルの色及び日本の工芸品というのは、ややこじつけという感は否めないが、日本的には感じるだろう。

 

ただ、あえて言うならば、亀倉雄策のデザインがそうであったように、国旗の日の丸を意識し過ぎではないかという気がする。近年のエンブレムを見ていると、国旗のデザインと関連付けている方が少ないかもしれない。比較すると、長野オリンピックの時のデザインの方が躍動感があったように思える。

www.huffingtonpost.jp

 

日の丸をデザインに採用するのは悪いとは思わないが、国旗の中でも白と赤い丸という組み合わせは、非常に印象が強く、これを素材として組み込むのは相当に難しいだろう。Jリーグのロゴと似ていると指摘されたように、どうしてもデザイン上の解決方法が似てくる。日の丸を素材にして、日の丸以上のデザインにするのはほぼ不可能といってよい。そういう意味では、大阪万博のシンボルマークは、桜をモチーフにしながら、日の丸も取り入れた非常に完成度の高いデザインだったといえるかもしれない。

 

しかし、大阪万博のシンボルマークも、最初のコンペで選べたデザインに、日本万国博覧会協会の会長、石坂泰三がクレームをつけ、やり直した経緯がある。亀倉雄策などの審査委員は紆余曲折を非難されたようだが、デザインの上では石坂がやり直しをさせた案の方が良かったことは今日では誰もが認めるところだろう。その意味では、東芝社長の後、経団連会長を12年務めた石坂泰三の方が広義の意味で判断力があったといえる。今日、これくらいの判断力、決断力がある人がトップであったなら、新国立競技場もこのような事態にならなかったかもしれない。

www.excite.co.jp

 

日の丸の次に、自他ともに認める日本を代表するイメージは桜だろう。大阪万博は桜と日の丸を上手く組み合わせたデザインであったことは間違いない。「5つの花びらで五大陸を、中央の円で日の丸=日本を表現」としているので、オリンピックのエンブレムとしても問題ないだろう。亀倉雄策さえも五輪と日の丸を分離してデザインしたが、大阪万博は二つを融合させた見事な解決策だったといってもよい。

 

それをどこまで意識したかわからないが、五輪招致のエンブレムも、五輪と桜を融合させた上手いデザインであったと思う。桜のリースがモチーフのようだ。「五輪を象徴する色である赤、青、黄、緑に加え、東京を表す色『江戸むらさき』を使用」ということからも、配色の考え方も見事だと思う。デザインしたのは、当時、女子美術大学4年(当時)だった島峰藍さんというから驚く。

news.mynavi.jp

 

何度か書いたが、国旗の赤丸は太陽を表しているが、太陽が赤い色だと認識している国はそれほど多くはない。西欧では黄色であることが知られている。

 

今回は、良くも悪くも、1964年の亀倉雄策のデザインのレガシー(遺産)を引き継いだ形になったが、そろそろ日の丸を過度に意識したデザインから脱却してもいいのではないかと思う。日の丸を使うならば、ある意味、日の丸以上のデザインを作らなければならない。日の丸、桜のデザインは、大阪万博、東京五輪招致エンブレム以上のものはなかなか出てこないだろう。この問題は、今後も様々な国家的なイベントをする際のデザインの課題として残ると思うが、もっと驚きのある冒険的なデザインが出てくることを願っている。

 

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