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電子書籍紹介という新しい市場開拓のパイオニア-きんどうZON『Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話』三木学

 

Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話

Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話

 

kindou.info

 

電子書籍元年と言われてから数年が経つが、本格的に日本に電子書籍が普及するきっかけとなったのは、明らかにAmazonがKindleという電子書籍端末を日本で発売開始した2012年だといえるだろう。それからすでに3年が経つ。

 

それは、音楽配信元年と何年も言われながら浮上しなかったのに、AppleがiPodとiTunesをリリースしてから爆発的に普及したように、ネットワークとデバイスの連携が非常に大きい。

 

Amazonはすでに書籍などのネット販売をしていた実績があるため、クレジット情報は保持しており、後はネットストアとデバイスを作れば、電子書籍の流通環境を整えることは可能だった。クラウド技術にも長けており、Kindle端末だけではなく、購入した電子書籍をコンピュータやスマートフォンなど、どのデバイスからでも閲覧できる環境を一早く構築している。

 

さらに、Amazonアソシエイトという、ブログなどで商品を紹介し、そこから購入されれば、売上の数%を紹介者に還元するというプログラムが、Amazonの利用者を加速度的に増やしたところもある。現在、楽天市場をはじめ、様々なサイトに商品紹介プログラムとして採用されているアフィリエイトというジャンルに先鞭をつけたのもAmazonである。

 

日本の電子書籍市場は、日々膨らんでおり、そのタイトルも充実してきている。『Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話』は、「きんどるどうでしょう」というKindle本紹介サイトを運営し、Amazonアソシエイトで得られる収益だけで暮らししている、きんどうZON氏による電子書籍だ。

 

Kindleが日本で発売されてから間もない2012年11月30日に正式スタートし、2015年8月26日で満1000日経ったことを記念して発売された。毎月の利用者が約4万5千人、累計販売数1000万冊というから、その利用者数と販売力に驚く。すでに中~大型店クラスのメディアとなっているという。電子書籍の販売だけで生計を立てている人は自分だけであると自認するとともに、そのノウハウをかなり明らかにしており、貴重な内容となっている。

 

実は、私もKindleで自費出版ができるKindle ダイレクト・パブリッシングというサービスで、電子書籍を発売しており、その仕組みはある程度理解している。「きんどるどうでしょう」の期間限定無料イベントにも参加させていただいたことがある(それは下手な横好きの自作小説であったが…)。

 

紙の本の編著もしているが、ほとんどお金がかからずすべてを自分で完結できるという仕組みは非常に魅力的だったし、知人の描いた紙の本を電子書籍にして配信できるのも新しい可能性を感じた。

 

そこで一番難しかったのは、電子書籍の宣伝である。日本上陸前にAmazon.comなどでも電子書籍をリリースしていたこともあり、海外で電子書籍を宣伝する難しさは嫌というほど痛感したが、日本でも同様に難しい。最近では、大手の出版社もかなり参入してきているので、そこで存在感を示すためには、ある程度のネット上での認知度が必要になる。

 

そういう電子書籍の広報的難しさや課題を十分把握した上で、「きんどるどうでしょう」は新刊や無料本、値下げセール本など積極的に紹介し、その紹介料で運営しているのだ。かつて書籍の紹介料は、5%だったと思うが、今では3%になっている。しかし、電子書籍の普及はこれからなので、8%と高いのだ。そういう紹介料の高さも収益性に寄与しているだろう。※きんどうZONさんからご指摘して頂きました。ありがとうございます。

 

本書が特にターゲットとしているのは、既存の出版社の電子書籍の売り方の提言である。きんどうZON氏は、かつて電子書籍の出版サービスもやっている会社で勤めていたこともあるらしく、「きんどるどうでしょう」はその時に考え、却下された案をブラッシュアップしたものでもあるそうだ。

 

特に出版社が電子書籍を発売する際に、メディア化することで、作品の認知を普及させる方法にについて細かくノウハウを開示している。でもここで書かれていることは、紙の書籍でもある程度有効であると思われる。

 

どちらにせよ、AmazoがKindleダイレクト・パブリッシングという、直接作家が出版できる仕組みを提供している以上、既存出版社は中抜きされる可能性もあり、それを避けるには出版社自体がメディアとして存在感を示すことができるようにならないと駄目だろう。そういう意味では完全にプロ向け、業界向けの内容ではあるが、ある程度本気で活動しているブログ運営者にも参考になる要素はたくさんある。

 

電子書籍の市場はまだ広がり始めたばかりであるが、すでに膨大なリリースの中で埋もれている作品で溢れている。それを読者のニーズに合う形で情報提供する方法は、たくさんあるだろう。本書はその可能性とノウハウについて惜しげもなく披露しているわけだが、対抗馬が出てくると全力で戦いたい、と応援?している。Kindleをソーシャルメディアを使って共有して読む方法など、新しい読書の仕方について提言しているのも面白い。

 

電子書籍が盛り上がるためにも是非、対抗馬がたくさん出てきて欲しいものである。それは紙の本とはまた違った新しい読書の愉しみが生れる可能性にもなるだろう。

 

 

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参考文献

 

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