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ビジュアルレビューマガジン

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日本人の身体と踊りの原風景「阿波踊りに残る日本人の身体技法」三木学

お祭り ファッション 色彩 スポーツ

www.nhk.or.jp

徳島市:阿波おどり

 

よさこい祭りに引き続き、昨日はNHKBSで徳島の阿波踊りの特集がやっていたので、思わず見てしまった。実は、親戚が徳島にいるので、一度だけ生の阿波踊りを現地で見たことがある。観覧席のあるメインストリートだったと思うが、小学生のころなので正確には覚えていない。

 

昨日も観覧席のある有料演舞場からの中継だったのだが、有料演舞場も4カ所あるようでどこだったのかわからない。番組の最初だけ見逃したので、もしかしたら告知されていたかもしれない。

 

番組でもやっていたのだが、阿波踊りの歴史は盆踊りに由来しているようだ。とはいえ、日本のほとんどの踊りに盆踊りの影響は強い。その理由は、一遍上人ら時宗が広めた踊り念仏が日本各地に布教し、それが伝承されたからであると言われている。なぜ8月の半ばの盂蘭盆会の時期に開催されるかというと、念仏踊りの熱狂で治安が乱れるため幕府が開催時期を盂蘭盆会の時期に限定したから言われている。そこで先祖崇拝と結びつく。

 

盆踊りは、室町時代後期には、「鉦・太鼓・笛など囃しものの器楽演奏や小歌に合わせて様々な衣装を着た人びとが群舞する踊り」(Wikipedia)である風流踊(ふりゅうおどり)などへとつながっていく。風流は、南北朝時代には婆娑羅(ばさら)、戦国時代から江戸初期には傾奇者(かぶきもの)と言われるようになる。

 

阿波踊りには、風流踊の名残が十分見られる。三味線、笛、太鼓、小唄など、音楽的な要素は風流踊の流れを汲むものだろう。ただ、基本的には阿波で伝承されている盆踊りの総称を指す。だから、四国三大祭りの一つだけではなく、日本三大盆踊りの一つになっている。

 

阿波踊りの起源は室町時代にあるかもしれないが、確実に盛んになったのは、江戸時代であることはわかっている。「えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、ヨイヨイヨイヨイ、踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」という歌詞で、知られる小唄「阿波よしこの」の第一番は、「阿波の殿様 蜂須賀さまが 今に残せし 阿波踊り」とある。

阿波踊り篠笛譜面/よしこの

 

蜂須賀様とは、阿波国の大名であり、徳島藩祖である蜂須賀家政である。蜂須賀家政は、徳島城が出来たときに、築城祝いとして踊りを奨励したという説があり、歌詞にも刻まれている。

 

しかし、番組でもやっていたが、戦時中は禁止され、戦後になってGHQの許諾を受けて復活したそうである。400年の歴史を持つ阿波踊りも、戦後に進化した要素は大きく、よさこい祭りとまではいかないまでも、様々な連(れん)による、かなりバラエティに富んだ踊りが披露されていた。各踊りのグループは、連と言われている。

 

よさこい祭りのような、すべての文化を取り込むような進化ではないが、ある型を守りながら、独自の洗練を見せている様子が対照的で面白かった。また、徳島藩は特に、吉野川流域で藍染が盛んに行われていたので、衣装に藍が多く使われているかもしれないと思って見ていた。淡い青とピンクが特に目立っていたが、濃い藍はあまり見られなかった。実際はどうなのだろうか?

 

実は、藍染を奨励したのも、蜂須賀家政なのである。「徳島藩は、藍師や藍商から取り立てる租税で藩の財政を確立し、“阿波25万石、藍50万石”」と言われるほどになったという。だから、江戸時代には藍染に染めた着物で踊る人々も大勢いたことだろう、

阿波藍 | 阿波ナビ

 

しかし、特に気になったのは踊りにおける体の使い方だった。阿波踊りは、男踊りと女踊りに分かれるものの、右手を前に挙げて右足を前にだし、左手を前に挙げて左足を前に出すというのが基本ルールになっている。

 

これは明治以前の日本の歩き方であるナンバに似ている。右手と左足、左手と右足という手脚を逆にねじって前に進むのは、明治以降に軍隊式の歩き方を教育されてからだといわれている。それ以前は、着物を着ているため、手足をねじって歩くと、着物がほどけてしまう。

 

また、爪先を内側に出す女歩きと、外側に出す男歩き、武士歩き、町人歩き、遊女歩きと、微妙に歩法が違う。阿波踊りは、男踊りは男歩き、女踊りは女歩きになっており、激しいステップを踏む連でも見事にこれらの歩き方で捌いていたのが印象的だった。これはまさにナンバに通じる歩法であり、失われた日本人の体が現出していると感じられた。

 

ナンバは、最近では日本古来からの歩法であり、日本人の身体に合っているため、様々なスポーツに応用可能ということで、スポーツ界などでも研究が進んでいる。もしかして、ナンバを含めた日本人の身体技法を最も現代に受け継いでいるのは、阿波踊りを守っている徳島の人々かもしれない。

 

明治以降、西洋式の身体技法を会得すると同時に、肩こりや腰痛など、様々な身体的なトラブルを抱える現代の日本人や、アスリートにとっても、新たな視点で阿波踊りを見直すべきではないだろうか?

 

 参考文献

 

からだのメソッド―立居振舞いの技術 (ちくま文庫)

からだのメソッド―立居振舞いの技術 (ちくま文庫)

 

 

ナンバ走り (光文社新書)

ナンバ走り (光文社新書)

 

 

日本中世への視座―風流・ばさら・かぶき (NHKブックス (459))

日本中世への視座―風流・ばさら・かぶき (NHKブックス (459))

 

 

平安京 音の宇宙―サウンドスケープへの旅 (平凡社ライブラリー (508))

平安京 音の宇宙―サウンドスケープへの旅 (平凡社ライブラリー (508))