shadowtimesβ

ビジュアルレビューマガジン

スポンサーリンク

感度の進化と露出の新しい尺度「フィルムとデジタル-感度の拡張」三木学

www.yomiuri.co.jp

 

富士フィルムが1976年に発売した、カラーネガフィルム「フジカラー F-II400」が、国立科学博物館により、「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」に登録されたという。

 

未来技術遺産なるものがあることを今回始めて知ったのだが、科学技術史上の重要な成果を登録する制度で、2008年より国立科学博物館で実施している制度らしい。

 

「フジカラー F-II400」は、1976年に発売された世界初!の高感度カラーネガフィルムだという。当時の規格はASAという米国標準規格で感度を表しており、ASA400という、当時の4倍の感度を実現した。現在では国際標準規格であるISOで表される。古いフィルムカメラの愛好家なら馴染み深い規格かもしれない。

「カラーネガフィルム「フジカラー F-II400」の登場により、それまではストロボが無ければ撮影できなかった室内でも明るく撮れるようになり、また、シャッタースピードを4倍速くすることで手振れを解消するなど、屋内・屋外を問わずストロボなしで、失敗の少ない美しい写真が撮れるようになりました。」

 とプレスリリースにはある。これはどこかで聞いたようなキャッチフレーズだ。そう、最高ISO409600の超高感度カメラで話題になったソニーのα7Sだ。おそらく、キャッチフレーズはにたようなものになると思うが、ここまでくると夜でもスナップショットを撮ることが可能だ。

 

trendy.nikkeibp.co.jp

 

感度はフィルムカメラ時代から、絶え間ない拡張を続けてきた。しかし、デジタルカメラは、物理的に増感させているわけではない。電気信号によって増幅させている。

 

また、かつてならフィルムを変えなければ、感度を変更できなかったが、今なら1枚1枚変えられるだけではなく、感度オートにしておけば、適正露出になるよう勝手に判断してくれる。また、フォルム時代と異なり、100、200、400、800…というように指数関数的に高くなる感度の中間の感度でも撮影できる。つまり、無段階変化になっているのだ。

 

こうなると、露出の計算は、とたんに難しくなる。1960年代後半までは、カメラには露出計が内蔵されておらず、外部露出計を持ってない写真家も多かった。そのため、1960年に、ASAは露出を計算するAPEXシステムを考案し、絞り値とシャッター速度から簡易的に露出値を計算できるようにした。

APEX system - Wikipedia, the free encyclopedia

EV=AV+TV

という式で表され、
AVは絞り値を表す数値で、Apature Valure。f1.0=AV0とし、f1.4=AV1というように絞り1段に対して、AVは1つずつ変化する。

TVはシャッター速度を表す数値で、Time Valure。1秒=TV0とし、1/2秒=TV1というようにシャッター速度1段に対して、TVは1つずつ変化する。

この計算式は、以下のようなEV値表のような相関図で表すことが可能だ。

f:id:shadowtimes:20150909191755p:plain

 

露出 (写真) - Wikipedia より引用。

つまり、絞りF5.6で、シャッター速度1/30秒で撮影したならば、AV5+TV5なので露出値は、EV10となる。EV10の組み合わせは、上記の図のEV10を表す右斜めの斜線の線上分だけ存在する。組み合わせによって被写界深度などが変わるので、組み合わせが表現だということもいえる。

 

ただし、APEXシステムは、カメラに露出が内蔵されたり、外部の露出計が普及するにしたがって、あまり使われなくなった。また、この式と図はあくまで感度100を前提としているので、感度が変わると式と図に変更を加えなければならなくなる。

 

だから、実質的には、APEXシステムは米国標準規格になったものの普及しなかったかもしれないが、EV、AV、TVという言葉だけが残っている。

 

ただし、絞り、シャッター速度、感度による画像への影響がわかっていないと、表現豊かに写真を撮れないことは確かであり、この図は未だ有効である。しかし、感度がこれだけ拡張されてている現在、感度の軸をつけ加えて、3次元の露出図を作った方がわかりやすいだろう。さらに、それぞれが無段階変化になっているので、中間の値にも対応しなければならない。

 

露出の2次元図で、写真をプロットでき、露出値を測ることがきるソフトは以前開発したので、関心がある方は以下からダウンロードしてほしい。ただし、Windows専門であるのでご了承願いたい。

EVGrapherの詳細情報 : Vector ソフトを探す!

camera.itmedia.co.jp

 

デジタルカメラは、感度に革命的な進化を与え、それは写真の表現を格段に変えている。第三の露出とも言われる感度と、絞り、シャッター速度の関係を写真家が本当に理解できているかは難しいところだろう。その相関図は、立体になるので簡単に想像できるわけではない。

 

しかし、カメラのオート機能でもなく、感覚での撮影でもなく、理解をベースにした撮影を行う上で、感度を含めた立体図で自分が撮影した写真を比較することは有用な情報になるに違いない。また、初心者がマニアル撮影などの次のステップにいくために、今のデジカメの機能と効果を伝えるのはとても難しい。現在のデジカメ初心者には、フィルム時代とは違った教育メソッドが必要になっている。感度が飛躍的に進化したカメラを使いこなすためにも初心者が理解するためにも、露出に関する新しい尺度が必要だろう。

 

参考文献

 

楽しく読める写真用語事典―明快 (玄光社MOOK―実力upシリーズ)
 

 

今すぐ使えるかんたんmini 図解デジタル一眼のしくみ

今すぐ使えるかんたんmini 図解デジタル一眼のしくみ

 

  

デジタル一眼レフがわかる (Fist Book)

デジタル一眼レフがわかる (Fist Book)