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ビジュアルレビューマガジン

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新しい日本・東京のアイコンとは何か?「東京オリンピックとデザインの行方(9)」三木学

デザイン 東京五輪

www.nikkansports.com

撤回されたエンブレムに代わり、新しいエンブレムの公募のシステムの検討が進んでいるようだ。大きく方針は三つ。広く公募を行うこと。選考委員をデザイン関係者だけではなく、幅広い識者を集めること。テーマを幾つかに絞ること、である。

 

前回の極めて閉鎖的な公募システムに比べて、今回はその反省も含め、かなりオープンなシステムを採用するようだ。公募に関しては、幼稚園児まで広げる案も出てきているという。これは極めて開かれた国民参加で新しい国旗を決めようとしているニュージーランドの例なども参照したのかもしれない。しかし、数年かけて国旗を選ぶニュージーランドと比べて、期間と予算的な余裕がどこまで担保できるかは課題だろう。

 

極めて閉鎖的と述べたが、デザインコンペとしては前回の審査委員が述べているように門戸は広かったのだろう。しかし、デザイン関係者、つまり専門家による応募と審査が結果的に国民から受け入れられなかったのだから、公開性と民主性を高めるしか方法はないだろう。いわゆる審査における透明性を高めるということになる。ただし、公開性に関しては、公募はともあれ、商標を取得する以上、公開審査は限界があるので、審査委員の人数と分野を増やすことが当面の解決策になりそうだ。

 

応募資格が大きく緩和されることにより、評判の高かった招致エンブレムをデザインした島峰藍さんの参加も可能となる。招致エンブレムのモチーフは言うまでもなく桜である。桜のリースをデザインしていた。桜は自他ともに、日本を表象するイメージである。とはいえ、東京を表象するとは言いがたい。また、大阪万博のモチーフも桜であったので、そろそろ新しいアイコンがデザインされてもいいのではないかと思う。1940年の幻のオリンピックのポスターのモチーフになっていた富士山、1964年のオリンピックの朝日、1970年の大阪万博の桜で、日本の代表的なアイコンは揃っているわけだが、今回どれだけ新たなアイコンが提出されるか興味深い。

 

東京ということで言えば、富士山をアイコンにすれば、まだ場所性は出てくるだろう。朝日というのも、極東の都市という世界的な位置づけを考えれば場所性はある。桜は非常に魅力的であるが日本中どこでも咲いている。その他どれだけ現代の東京に合うアイコンはあるのだろうか?

 

個人的には、皇居を中心に螺旋形の都市になっている東京の特徴をモチーフに、五輪による螺旋を描けばいいのではないかということを前回書いた。オリンピックとパラリンピックによって二重螺旋になり、まさにDNAを引き継ぐことを表すことが可能だ。今回は応募資格が大幅に緩和されるため、僕も参加することは可能になりそうだが、アイディアに関しては著作権はないので、気に入った人がいれば積極的に利用してもらいたい。

 

もう一つ、アイディアを考えたので書いていこう。前回、訴訟されたように、今後、世界的なロゴデザインに関する盗作疑惑や著作権訴訟は爆発的に増えるだろう。実際、参照していなくても類似するケースは出てくる。モダンデザインの方法で単純化すればするほどその確率は高くなる。それを回避する方法は概ね二つ。一つ目は手描きのデザイン。二つ目は3Dデザインである。

 

その傾向は近年のオリンピックに顕著である。アテネや北京は手描きのデザインになっている。リオはオリンピックのエンブレムで初めて3Dデザインが採用された。にもかかわらず盗作疑惑が出ているが、3人が手をつなぐ形象と、RIOという文字を3Dデザインで融合させており、著作権訴訟で敗訴することはまず考えられない(訴訟問題にはなっていないが)。

 

このような世界的な著作権対策の流れを汲んだ二つの方法に加え、日本ならではの解決策も考えられる。それは日本語の活用である。日本語を使っている地域は、日本を含めてわずかであり、日本語を採用すれば著作権侵害の割合はかなり減る。また日本国内ならば、著作権裁判自体が少なく、裁判にならずに解決できる可能性も高い。なにより日本語は漢字、片仮名、平仮名を使う世界的にもユニークな言葉である。特に平仮名などは崩し字などを含めると3Dデザインとの融合も可能だろう。

 

日本語を使う例としてアイディアを挙げておきたい。それは将棋の駒である。将棋は日本のゲームである。将棋を知らない人でも、漢字や平仮名が使われているだけでも日本をイメージしやすい。また、将棋の駒の形である五角形が、エンブレムの元となった紋章の盾と逆となっているのも西洋とは違う文化を強調できて面白いだろう。

 歩兵 (将棋) - Wikipedia

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肝心の駒を何にするか、ということだが僕が考えているのは金メダルが連想できる「金」ではない。「歩」である。しかし、ただの「歩」ではなく「と金」である。「と金」とは一番弱い歩兵である「歩」が相手の敵陣に入ると、金成りとなって金と同じ動きができるようになる駒である。「と金」は「歩」の裏面であり平仮名で「と」とだけ書いてある。そこには、東京都の「と」、都の「と」に加え、地道に歩んできた果てに「金」メダルをとる、という意味も込められる。「と」のデザインは人のシルエットなどにすればいいと思う。このアイディアを採用する人がいるかはわからないが発想の参考にしてくれればと思う。

 

どちらにせよ、デザイナー諸氏は全員参加くらいの必要があるだろう。そうでなければ、デザインの専門性がさらに揺らいでしまう。非常に厳しい戦いになるかもしれないが、このようなプロセスを経て選ばれたデザインは、オリンピック選手を鼓舞するものになるに違いない。