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過去の著作物は敵か味方か?「TPP締結後の世界と著作権の行方」三木学

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 アメリカでロビン・シックのヒット曲「ブラード・ラインズ」が、マーヴィン・ゲイの遺族より「Got To Give It Up」の盗作として告訴され、約9億の支払い命令が下ったという。しかも、告訴理由が、歌詞やメロディではなく、楽曲のフィーリング(グルーヴ)が類似しているからだという。そのような理由で、著作権侵害が認められた例は世界的にも異例である。

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この論理が成り立つなら、似ている曲は歌詞やメロディのような客観的な事実ではなく、まさに「雰囲気」によって著作権侵害しているか、していないかが決まってしまう。著作権法の第一人者である福井建策弁護士は、この判決の異例さとともに、TPP締結後、著作権が非親告罪化した場合に、多くの告発が起こることで創作文化自体が委縮してしまう懸念を表明している。

 

著作権は、現在は親告罪であるため、著作権侵害を受けた著作権者のみが訴訟を起こすことが可能だ。しかし、非親告罪化すれば、第三者の告発や警察や検事の公訴が可能になる。その場合、悪意による告発が多発することも考えられる。今、コミックマーケット等で懸念されているのは、そのような事態が頻発することで、マーケット自体が壊滅的になるということである。

 

明らかな著作物の転用はともあれ、法律上の類似と判断するのはとても難しい。原作から翻案(アレンジなど)した著作物なのか、類似していても新たな著作物ととるのかは非常に曖昧である。だから、著作権侵害かどうかは、原告は下記を証明する必要がある。

(1)被告の著作物が原告の著作物に依拠して創作されたこと

(2)被告の著作物が原告の著作物と類似すること

(3)被告が、著作権法に定める利用行為を行ったこと

 著作者の権利 3.著作権侵害の成立要件より。

 

1、2は依拠性、類似性と言われたりする。アメリカの著作権法と日本の著作権法は違うが、今回、原告が依拠性や類似性をどこまで証明したのか気になるところだ。

 ※関連記事によると、インタビューが決定打となったようだ。類似性はグルーヴで判断されたらしい。判断したのが陪審員というのがポイントである。

 

話題となった東京五輪エンブレムも、プレゼン資料の画像転用は明らかな著作権侵害であるが、エンブレム自体のデザインは著作権侵害にならなかった可能性の方が高いだろう。しかしフィーリングが似ているということで著作権侵害に認定されるなら話は変わってくる。

 

どちらにせよ、我々は創作の帰路にたっているのは確かである。創作はどのようなジャンルでも無から有は生まれない。膨大な過去の著作物の土台の上に成り立っており、その組み合わせや新たなアイディアを加味することでオリジナリティが生れてくる。つまり過去の著作物を味方にして新たな創作してきたのが著作物の歴史である。

 

しかし、過去の著作物が、新たな著作物の敵となる場合、創作の力は著しく減退するだろう。著作権の保護期間が70年に延びた場合、ヒントにするにしても、著作権が切れた70年以上前の著作物を利用するしかなくなるだろう。もちろん、保護期間の著作物でも著作権者に利用許諾を得るという手もあるが、ヒントや影響の程度を測るのは難しい。どこまでがヒントでどこからが翻案かがわからないと、許諾の取り方も曖昧になるし、原作として認めてしまえば改変することは同一性保持権の侵害にもなり、創作性をかなり縛ってしまうことにもなりかねない。

 

このような不毛な争いが続くようなら、著作権も商標権や特許権のように、登録制にした方がすっきりするだろう。著作権が登録できない場合は、著作物の権利は得られなくなり、相互に使えることになる。創作は、高度に機械化、自動化する社会において、無限の可能性を残した数少ない領域である。それをいかに守るかは、人類にとっても重要な課題である。

 

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