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著作権管理と音楽の活性化「音楽と著作権」三木学

www.asahi.com

エイベックスグループが、自社が持っている約10万にも及ぶ楽曲の著作権管理を、JASRACから引き揚げ、系列会社のイーライセンスなどに移管すると報道された。これによってJASRACのほぼ独占状況が緩和され、音楽業界が活性化するのではないかという見方がされている。

 

JASRACはテレビ局などに対して、管理している曲を何曲使っても同じ価格にする包括契約を結んでおり、それが独占禁止法違反であると最高裁から判決が下るなど、その独占状態には批判がある。また、店舗などに対する過剰な徴収にも以前より非難する声がある。使用料徴収が包括であるがめに、使用者に対しては過剰な請求をしている可能性があり、権利者に関しては正確な使用料算出がなされていないため還元されてないのではないかという疑念があるからだ。有力な著作権管理団体が増えると、使用料の正確な把握と権利者への還元はさらにシビアに求められるだろう。

エイベックスのJASRAC離脱は業界闘争よりもJASRAC対利用者の問題に発展するか - novtan別館

 

そもそも、著作権管理事業法が施行されたのが、2001年のことなので、それまではJASRACしか音楽において著作権管理を行う団体はなかった。著作権管理事業法が出来たので、イー・ライセンスやジャパン・ライツ・クリアランスが業務を始めた。しかし、複数ある著作権の中で部分的にしか管理を出来なかったので、結局、JASRACの独占状況は変わらないまま現代にいたる。権利者にとってみたら、管理を複数に委託するのは面倒だから、結局すべてを網羅できるJASRACに依頼することになる。

 

また、JASRACは信託契約であるので、著作権の権利者となるが、その他の団体は委託契約なので使用料の徴収を代行するにすぎない。信託契約の場合、著作権侵害などに対して権利者として告訴することが可能だ。また、信託契約をしていると、著作権を持っている形になるので、すべての使用料を独自で決めることがきる。委託契約でも可能だとは思うが、信託契約ほどの強い力はないだろうし、現状では親告罪である著作権の告訴は難しいだろう。

 

エイベックスグループが目指しているのはどちらかというと、著作権の自主管理という方向性に近い気がする。そうでなければ、イー・ライセンスを系列会社にしたり、ジャパン・ライツ・クリアランスとの統合を図ったりしないだろう。TPP締結により、将来的に非親告罪化することも念頭に置いているのかもしれない。

 

意外なことに、音楽産業は衰退しているものの、JASRACの利益は延びているという。CDは買われなくなったが、ライブなどにビジネスの方向性が転換しており、そちらの分配額の方が多いからだという。

 

diamond.jp

 

つまり、ライブの多いエイベックスにしたら、ライブをする都度、JASRACに使用料を支払うのであれば、自社グループで管理していった方がいう判断をしたということかもしれない。ただ、朝日新聞の記事では下記のようにコンサートのなどの演奏権の管理も、JASRACに残すようなので、週刊ダイヤモンドの記事の推測とずれている。

一方、コンサートやカラオケ、店舗のBGMを含む演奏権の管理はJASRACに残すという。

 

もしかしたら、徴収しやすいコンサートなどは自社で管理し、週刊ダイヤモンドに指摘されている下記のような小さな店舗の徴収に関してはJASRACに信託するという契約を目指しているのかもしれない。

JASRACは、飲食店や衣料品店、美容院など、BGMとして音楽を流しているあらゆる業態の店舗などを訪問して使用料を徴収する徹底ぶりが有名だ。今年7月にはそうした全国の258施設に、過去の使用料支払いとBGMの使用停止を求める民事調停を一斉に申し立てたことも話題になった。

 

その狙いがどこにあるのかわからないが、音楽のビジネスモデルが大きく変換し、多くの権利を自社グループで持つ方が得策だと判断しているのは間違いないだろう。

 

JASRACは使用者からはよい印象は持たれてないかもしれないが、そもそもはレコード会社、音楽家や演奏家などの互助的な組織であり、ここまでの体制を築いている国はなく、著作者が得てきた恩恵は大きい。逆に出版業界などは、音楽業界のような 強い出版権や譲渡契約などの契約体系を築けなかったがために、電子書籍などの移行が大きく遅れた。

 

音楽に著作権管理団体が発達するのは、その二次利用の多さが要因であり、それを人気のある音楽家が管理するのはほとんど不可能である。結局は著作権者と使用者の双方が使い勝手のよいサービスが残るだろう。ただ、著作権管理団体の対抗馬が出来たからといって、音楽が活性化するという単純なものではない。結局は、レコードという発明によって生まれたレコード産業を、電子配信時代にどのような工夫をすれば、活性化する産業にしていけるという点にかかっているだろう。エイベックスグループは、その方法も含めて模索しているだろう。

 

参考文献

 

著作権の考え方 (岩波新書)

著作権の考え方 (岩波新書)