読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

shadowtimesβ

ビジュアルレビューマガジン

スポンサーリンク

収蔵庫という名の巨大美術館-工場用倉庫とアートの転回「Open Storage 2015-見せる収蔵庫-」三木学

f:id:shadowtimes:20151103140432j:plain

f:id:shadowtimes:20151103140547j:plain

「Open Storage 2015」開催情報vol.2(10/31~11/24) | おおさか創造千島財団

昨年から始まった、大阪市住之江区北加賀屋にあるMASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)の「Open Storage 2015-見せる収蔵庫-」が今年も開催されている。

 

もともと、千島土地株式会社の文化事業の一環として、木津川河口の工場地帯である北加賀屋に所有している名村造船所跡地や倉庫跡、空家をアーティストやクリエイターに提供し、新たなクリエティブ拠点を作ろうという構想「KCV(北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ)構想」が2009年に提唱され、2011年からはおおさか創造千島財団として活動が続けられている。

 

巨大アート作品を約1,000㎡の倉庫跡に収蔵するプロジェクトも、MASKとして昨年正式にスタートしてこの時期に一般公開が行われるようになり、今年は2回目となる。今までは収蔵することに重きが置かれていたが、滞在制作や一般公開など、作る、見せるという役割を果たすことで、アーティストや鑑賞者により開かれていっている。今年はツアーなど対話型作品鑑賞プログラムも開催されるということで、話すことも加わったことになる。

 

MASKには、ヤノベケンジ、やなぎみわ、名和晃平、金氏徹平、久保田弘成など、世界的に活躍するアーティストの巨大作品が収蔵され、国内外の芸術祭に出展された作品がずらりと揃っている。それは、美術館の収蔵庫のように、普段は展示されていない舞台裏の空間かもしれないが、一度公開されると実質上、巨大な美術館になっている。

 

横浜トリエナーレや京都国際現代芸術祭パラソフィアで話題となった、やなぎみわの《『日輪の翼』上演のための移動舞台車》2014や、ヤノベケンジの巨大作品群、新たに収蔵された名和晃平の《N響スペクタクル・コンサート「Tale of the Phenix」」舞台セット》2015などがずらっと並ぶ様子は壮観というしかない。国内の美術館でこれほどの巨大アート作品を一度に見られるところはないだろう。舞台裏と書いたが、やなぎみわ、名和晃平、ヤノベケンジとも、演劇や舞台のためのセットや小道具として制作されたものも多く舞台との親和性も高い。

 

ヤノベケンジに関しては、代表作《ジャイアント・トらやん》、 《サン・チャイルド》、《ラッキードラゴン》、《ウルトラー黒い太陽》に加え、琳派400年記念祭の一環として京都府立植物園で先日まで展示されていた《雷神の塔》や、増田セバスチャンとの新作《フローラ》などが一堂に会している。巨大なヤノベ作品を一つの箇所で展示できる場所などほぼあり得ないが、MASKでは天井高も十分であり余裕さえある。

 

今年のメインアーティストである宇治野宗輝の新作《THE BALLAS OF EXTENDED BACKYARD,THE HOUSE》2015はアーティスト・イン・レジデンスとしてMASKで制作され、音響装置が取り付けられた脱構築的で「パンクな」家がそのまま倉庫内に展示されていた。家がまるごと入る美術館は国内にはほとんどないだろう。倉庫に家がある光景はシュールという他はないが、今日の工場生産としての家を象徴しているようでもあるし、身体によって家を解体しているともいえる。しかし、非現実的な大きさの倉庫を身体的に理解するにはちょうどよい。

 

MASKの試みは、かつて造船所があり、それに提供する部品などが作られていた巨大倉庫だからこそ可能なことであり、工場街の用途転用として新たな可能性を示している。宇治野はオープニングトークにおいて、この場所に通うことで、日本の近代化に対して、身体的に理解できるようになったという趣旨の発言をしていたが、確かに、木津川河口沿岸は、日本で初めての紡績会社がつくられたり、鉄鋼業や造船業が盛んだったり、日本の工業化と切りはなせない土地である。一線は退いたものの、まぎれもなく日本の工業化の一翼を担った場所であり、屋台骨でもあったはずである。それが今日、現代アートの屋台骨になっている現状は時代を表しているともいえる。

 

今回の宇治野の試みは、日本の近代化、工業化の過程を、身体とアートを通して遡行する試みであり、それらの西洋文化と同時に入ってきたアートの起源や意義も同時に問うている。今や西洋由来の物質文明はグローバリズムによって地球の僻地まで到達しているが、同時に地球によって大きなしっぺ返しをくらいつつある。工場街のアートへの転用は、身体性や自然への転回(あるいはアートも)ともつながっており、これからの人類の方向性を示唆しているようにも思える。そのように小難しく考えなくても、巨大な作品に触れる絶好の機会となり、身体性を十分に味わえる展覧会だろう。

 

参加作家  :宇治野宗輝、金氏徹平、久保田弘成、名和晃平、やなぎみわ、ヤノベケンジ(50音順)
会期     :2015年10月31日(土)-11月23日(月・祝)  

                     金・土・日・祝日のみ
開場時間   :13:00~19:00 ※イベント・プログラム開催時は変動

会場     :MASK (MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA) 

住所              :大阪市住之江区北加賀屋5-4-48 

入場料           :無料 ※イベント・プログラムは、一部有料。
主催/企画 :一般財団法人おおさか創造千島財団
企画協力  :木ノ下智恵子 (大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任准教授)
特別協力   :dot architects、片岡慎策
鑑賞プログラム監修:京都造形芸術大学 アートプロデュース学科、アート・コミュニケーション研究センター
助成    :大阪市
協力    :山本現代、京都造形芸術大学ウルトラファクトリー、ShugoArts、SANDWICH ほか

広報連携  :公益財団法人 山本能楽堂

お問い合わせ先:おおさか創造千島財団 事務局

TEL: 06-6681-7806(平日9:30-17:30)/会期中問合せ先TEL:06-6681-617