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ビジュアルレビューマガジン

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ゴッホは色弱者か?「色弱者と画家」三木学

色彩

bigissue.jp

 

色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線

色弱が世界を変える カラーユニバーサルデザイン最前線

 

 

現在販売されている、ビックイシューの特集が「異なる色世界」なので購入してみた。ビックイシューはご存知の方も多いように、1991年にイギリス・ロンドンから始まったホームレスを支援するための雑誌で2003年に日本版が創刊された。書店やネットを介さず販路はすべてホームレス経由であり、販売された売上の5割程度が販売者の収入になる。(定価350円の内、180円)雑誌不況が鮮明になるなか、昨年、創刊12周年を迎えたというから大したものである。雑誌の面白さがホームレスの収入に直結するだけに、編集者にかかる責任も大きいだろう。

 

さて、今回はホームレスの支援ということよりも、特集が気になって購入したのだが、内容も面白いものだった。おそらく色弱者の特集ではないかと思っていたら、やっぱりそうで、しかも知人の活動も紹介されていた。知人といっても、以前勤めていた会社で開発した色彩分析ソフトを購入して頂いたお客様だった方々だ。

 

カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)の伊藤啓(発起人)さんと、伊賀公一さん(副理事)である。伊藤さんは東大の分子神経生物学の研究者であると同時に、色彩認知の脳科学的な知見を元にカラーユニバーサルデザインを創始した。彼らはともに、赤錐体の分光感度がずれている色弱者であり、赤と緑の色弁別が困難である。

 

色弱者とは、主に、網膜内に3つある錐体細胞、L、M、Sのいずれかが機能していない、あるいは機能しているが、分光感度がオーバーラップしているため、色弁別が困難な方をいう。L錐体、M錐体、S錐体は別名、赤錐体、緑錐体、青錐体といわれ、分光感度のピークで分類されている。特に赤錐体と緑錐体は、進化の過程で分岐したといわれ、現在でも分光感度が重なっているため、強度になると赤と緑がともに茶色に見える。

 

色弱者は、幾つか強度やタイプがあるものの、国内で300万人いるとされ、CUDOでは公共性の高いサインなどにおいて、色弱者にも視認しやすいような配色かどうか検証をし、合格したものに対してCUDマークの認証を与える活動をしている。

 

以前、制作した色彩分析ソフトが研究ツールとして、彼らに関心をもっていただいたのは、色のグラデーションを3次元立体で確認できるからだった。今までの色弱者が弁別しにくい領域は2次元で作成されており、わかりにくかったという背景もある。CUDOはその活動も研究も社会的にとても意義のあるものだといえる。

 

それはともあれ、この特集記事で一番関心を持ったのは、北海道のカラーユニバーサルデザイン機構の副理事で、デザイナー、画家、一級建築士でもある栗田正樹さんの話である。

 

雑誌でも紹介されていたが、最近では色弱者の色の見えをシミュレーションできるライトやアプリが開発されており、様々なタイプの色覚をもつ人々のコミュニケーションの役に立っているが、記事ではゴッホの「夜のカフェテラス」に、色弱者の見えを再現するライトが当てられている。

 

そうすると、黄色と紫みの青の補色(色相環の反対色)で配色された「夜のカフェテラス」が陰影を帯び奥行きが出てくる。赤錐体や緑錐体の分光感度がオーバーラップしている色弱者では、青と黄色はくっきり見えるが、緑と赤は茶色に見えてしまう。つまり、ゴッホは印象派やシュヴルールの色彩理論の影響を受け、黄色と青を得意としたというだけではなく、はっきりと認知できていたのは、その二色のグラデーションだったのではないか、ということも想像できる。ここではその仮説について強く語られているわけではないのだが、度合いはともあれ、ある程度の色弱者であった可能性は十分考えられる。

 

ゴッホについては、共感覚者からすると共通の認知を感じるため、共感覚者であったのではないか?という推測もされており、近年の脳科学の進展により、その芸術性の秘密に今後も様々な観点から光が当てられるだろう。

 

栗田正樹さんも画家であり、豊富な色を使って絵を描いているという。現在、展覧会を開催している中屋敷智生さんも、色弱者でありながら、色の名前を頼りに弁別できない色を多用した色彩豊かな絵を描いている。完成品からは、とても色弱者の描く絵とは思えないが、詳しく分析するとその知覚の片鱗が見えてくる。

 

ゴッホ以前も色弱者の画家はいただろう。色弱者だから見える、表現できる絵の歴史や世界が実は広がっていることを改め認識させられたのだった。

 

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