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ビジュアルレビューマガジン

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「NAMURA ART MEETING’04-’034アーカイブルーム&森村泰昌アナザーミュージアム(1)」三木学

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アートプロデューサーの木ノ下智恵子さんに、NAMURA ART MEETINGのアーカイブルームを制作するので、編集を手伝ってくれないか?と依頼されたのは、アートアトリエB1で開催された港千尋さんのトークショーを聞きに行った日だったので、昨年の12月に近かったと思う。

 

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名村造船所跡地(現CCOクリエイティブセンター大阪)

NAMURA ART MEETINGとは、大阪市住之江区の北加賀屋にある名村造船所跡地で開催されているアートイベントで、初回からすでに10年以上が過ぎている。正確にいうと、NAMURA ART MEETING’04-’34が正式名称であり、2004年から2034年まで30年間継続される異例に長期間のアートイベントである。

 

もともとオーナーである千島土地株式会社が、名村造船所に賃貸してた土地であるが、名村造船所が移転して、遺構は残ったまま借主が不在になっていた。それをアートや文化活動に転用することが、当時のNAMURA ART MEETINGの実行委員と千島土地株式会社の芝川社長(当時専務)の間で協議され、2004年から30年間、継続してアートや文化活動の活用に使うことが決められた。30年間というのは、アート系から見ると、とんでもない長さに思えるが、借地借家法上の借地権は30年間が基本である。

 

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名村造船所跡地 旧製図棟(現CCOクリエイティブセンター大阪総合事務所棟)

2004年の第1回(Vol.00)に一観客として見に行った際は、湾岸エリアに入る木津川河口に面した広大な造船所跡地や対岸の中山製鉄所が火を噴きあげる雄大な景色に驚いたものである。そこで、当時実行委員だった小原啓渡、松尾惠、高谷史郎、木ノ下智恵子が企画し、浅田彰、岡崎乾二郎、五十嵐太郎、椿昇、橋爪紳也、服部滋樹など、早々たる顔ぶれによる、対談や鼎談、シンポジウムなどの対話、MEETINGが行われた。

 

その後、2015年までに6回のMEETINGと1回の調査研究会が開催された。内容はHPに詳しいが、関西を中心に、著名なアーティストやクリエイター、批評家が集っていることがわかるだろう。

NAMURA ART MEETING '04-'34 趣旨

 

この膨大な歴史は、コンセプトに以下のように書いているように、「ひと連なりの現場」、「出来事」と捉えられており、実際開催された内容も、展覧会だけではなく、イベントや対話などの割合が非常に多い。物質を新たに創るというよりは、場所の魅力を重視し、空間の利活用や多くの人々の対話と出来事の創出に力点が置かれているといえる。

NAMURA ART MEETING '04-'34 は、現在から2034年までの30年間を芸術のひと連なりの現場ととらえ、芸術活動と隣り合う社会や個人が、<出来事>を共有しつつ未来を創造するという実験です。


今でこそ日本でも多くなっているが、産業遺産の利活用のさきがけの一つだろう。
 実際、2007年に名村造船所跡地は、経済産業省によって近代化産業遺産に認定された。しかし、イベント系のプロジェクトをアーカイブすることは非常に難しい。難しいと同時に、逆説的に、アーカイブにしない限りは、どのような歴史だったか辿れないという欠点がある。

 

ただ、アーカイブという言葉が、一般的に使われるようになったのは2000年以降のことだと思うが、デジタル化が進んだことと時期が重なっており、デジタルデータの蓄積がアーカイブと勘違いされることが多い。しかし、アーカイブはそもそも公記録保管所のことであり、すでに公式記録として出版された資料などを保管するという意味がある。

 

その意味でいえば、一切編纂されておらず、出版はまだしも冊子にもなっていないデジタルデータはアーカイブ未満といえる。おそらく、地域アートと言われるような地域アートプロジェクトや芸術祭が各地で開催されるようになって、未編集のデータの編纂に困っている団体は無数にあるだろう。しかもデジタルデータは半永久的どころか、物理的に損傷したり、再生機が販売されなくなると、二度と見ることができないという事実も認知されてきた。真の意味で、アクセス可能なアーカイブにすることは、どこの団体にとっても喫緊の課題なのだ。

 

NAMURA ART MEETINGでは開催されたイベントは、すべて記録されており、対談、シンポジウムなどの多くがテープ起こしがされ、来場者の統計データなどとともに、毎回報告書としてまとめられている。しかし、それらを出版するには著作権者の許諾が必要であるし、未編集の膨大なデジタルデータも多い。その10年もの膨大なデータを編集するには、それらを選別し圧縮する歴史観や編集方針が必要となる。

 

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森村泰昌アナザーミュージアム フェルメールのセット@名村造船所跡地

 

今回、Vol.5-1でNAMURA ART MEETINGに招聘された港千尋さんらの提案もあり、「アーカイブからの創造」を新たなテーマに掲げ、名村造船所跡地の遺構自体を、アーカイブと捉え、その記録は旧製図棟内のアーカイブルームに留めると同時に、逐次公開するという方針が定められた。同時に、「アーカイブからの創造」は、森村泰昌さんの国立国際美術館の大規模個展に合わせ、今回、大量に展示されている新作の制作スタジオとなった名村造船所跡地に組まれたセットを、アナザーミュージアムという形で公開する新しい試みが行われた。

 

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NAMURA ART MEETING’04-’034アーカイブルーム

 

アーカイブルームは、名村造船所の旧製図棟、現在はクリエイティブセンター大阪(CCO)の総合事務所棟にある旧通信室を改装して設置されることになった。

 

僕はNAMURA ART MEETINGは過去3回ほど見に行ったことがあるが、もちろん全貌を把握しているわけではない。全回実行委員として参加しているのは木ノ下智恵子さんのみであり、初回から記録として関わり、途中から実行委員となった甲斐賢治さんらが中心的に全体像を把握しているといえるが、それでも膨大なイベントを一つ一つ網羅しているわけではないだろう。

 

つまり、出来事の共有ということで言えば、すべての出来事は当然、全員に共有されておらず、無数の出来事が個々の記録と記憶に拡散している状態だといえる。そのようなリゾーム状のアーカイブを体現するのは難しいので、一度、明晰にリニアなラインを引いた上で、それらを共有し、さらに、そこから漏れ落ちる無数の出来事が発見できるような形が望ましいと考えた。

 

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設営をするドットアーキテクツと倉澤洋輝さん。空間面に広域地図は貼る。

それで、旧通信室が8畳程度の小さな空間であることもあり、以下のように4つの面に固有の役割を持たした上で、相互に参照できることを試みた。

1、時間+展示面
2、空間面
3、アーカイブ+リファレンス面
4、ランドスケープ面

そして、中央の空間で新たに人々と場が出会うように設計することにした。そこでは過去と現在、物質と情報が交錯し、未来を想像・創造する臨場空間となる。

 

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時間+展示面 各回の概要とタイムラインが並ぶ。

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アーカイブ+リファレンス面 各回の資料と参考文献が並ぶ。

そのようなコンセプトを基に、時間+展示面には初期から現在までに各回の概要説明とタイムライン、空間面には名村造船所跡地周辺の広域地図を、アーカイブ+リファレンス面には、ストレージボックスに各回の資料(報告書、プリント資料、デジタルデータ)と参加メンバーの参考文献を、ランドスケープ面は、河口域の風景が全面ガラス張りで見えるようにした。

 

これらの改修の設計は、北加賀屋に本拠地を持ち、現在注目されている建築家集団ドットアーキテクツ、グラフィックデザインは倉澤洋輝さんが担当した。

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ランドスケープ面から木津川河口域を臨む。

4つの面をパノラマのように見回すことで、NAMURA ART MEETINGの場所、時間、現在の風景、記録・集積された出来事、関連の書籍、DVD、CDなどを閲覧・視聴することができる。この場所でしかありえない体験型のアーカイブルームになっていることがわかると思う。

 

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4月4日に開催された森村泰昌アナザーミュージアムと連動した「THE PARTY」には多くのアーティストや関係者が訪れた。

この空間は、今後の「アーカイブからの創造」に向けて、更新、集積されていき、人々の新たな出会いと記録の発掘の場になるはずである。つまり、アナザーアートミーティングルームなのである。

 

常時開館はしないが、
第2期、2016年5月3日(火・祝)・4日(水・祝)・5日(木・祝)
第3期、2016年6月10日(土)・11日(日)・12日(月)
には、森村泰昌さんのアナザーミュージアム等と同時開催されているので、是非お立ち寄り頂きたい。


その他、森村さんのレクチャーや木津川河口域のクルージングツアーなど、多彩なプログラムが開催されるので詳しくは以下をご覧ください。

NAMURA ART MEETING Vol.05