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「新山清とサブジェクティブ・フォトグラフィー」 勝又公仁彦

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 本日、2016年5月7日まで、東京の新井薬師にあるスタジオ35分にて「Subjective Photography vol.1  新山清(Niiyama Kiyoshi 1911-1969)」展が開催されている。

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 新山 清(1911-1969)は愛媛県出身。東京電気専門学校卒業後、1935(昭和10)年に理化学研究所に入社。1936年にパーレット6.3付きで写真にめざめ、同年にパーレット同人会へ入会。写真家としての活動を開始する。1958(昭 和33)年、旭光学商事株式会社(現 リコーイメージング株式会社、旧ペンタックス株式会社)に入社、東京サービスセンター所長などを歴任。第一線で活躍する多くの写真家と交流を持ちながら、自身もアマチュアカメラマンの指導をする一方、写真家としての活動も積極的に行った。1969(昭和44)年5月13日、凶刃に倒れ急逝。

 

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(C)Niiyama Kiyoshi

 

 今では知る人ぞ知るといった写真家ではあるが、急逝した年には、濱谷浩、植田正治、緑川洋一らの後援により新山清遺作展が開催され、遺作集『木石の詩』が出版された。その後、子息である新山洋一(コスモスインターナショナル社長)により2冊の写真集『新山清の世界vol.1 パーレット時代1937~1952』(2008年11月、日本カメラ社)と『新山 清の世界vol.2 ソルントン時代1947~1969』(2010年11月、コスモスインターナショナル)が発行されている。

 

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(C)Niiyama Kiyoshi

 

1950年代の初めにはドイツの主観主義写真の提唱者オットー・シュタイナート(シュタイネルト)によりヨーロッパに紹介され、現在でも欧米の写真市場でプリントが取引されるなど国際的な評価と人気も高い。

 

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 展覧会の表題になっているSubjective Photographyの和訳が先ほどの主観主義写真である。これは1951年にドイツのザールブリュッケン国立美術工芸学校で開催された「Subjective Photography(ドイツ語 Subjektiv Fotografie)」展と翌年に刊行された同名の写真集及びそれらで提唱された写真表現のことである。本来「主観的写真」と訳すべきところを「主観主義写真」としたことには当時日本の写真界を席巻していたリアリズム写真への対抗意識があったことが推察されている。土門拳の提唱するリアリズムの定義が「対象のモチーフに対する客観的な真実だけを追求するもので作者の主観的な イメージやファンタジーを追求する世界じゃない」というものである一方、シュタイナートは「主観が持つ個性的なしかも自由な実験的な技術の中から新しい人間性、造形性もともに発見したいという考え」であり、戦前の前衛写真を後継するものの一端としても歓迎された。

 

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(C)Niiyama Kiyoshi

 

 1954年に開催された「Subjective Photography 2」展には岩宮武二、石元泰博ら日本人写真家が9名参加。1956年には「日本主観主義写真連盟」が創設され、瀧口修造、阿部展也、北代省三、名取洋之助ら40名が会員となった。同年末には会員の作品に植田正治、奈良原一高、大辻清司、石元泰博らを加えて「国際主観主義写真展」が『サンケイカメラ』の主催により東京、日本橋高島屋で開催され新山清の作品も出品された。『サンケイカメラ』は55年から56年にかけて、カメラ雑誌のなかでもこの動向を積極的にとりあげている。しかしこの後日本での主観主義写真のムーブメントは急速に減退し消滅した。その要因は写真造形に対する理解や態度の深化よりも、技法の形式化のみが進んでしまったことや、主観主義写真の概念が曖昧だったため観衆に理解されにくい上に作家たち自身がその枠に入る事に違和感を抱くようになったためでもあるようだ。

 

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 そのような主観主義写真であるが、今回の「Subjective Photography vol.1 新山清(Niiyama Kiyoshi 1911-1969)」展を開催するに至った経緯についてスタジオ35分ディレクターの酒航太さんにお話を伺った。

酒氏「4年程前に自分の写真展の為に大型プリントをお願いしていたのがコスモスインターナショナルで、そこの社長さんが新山清さんのご子息の新山洋一さんでした。当時は同社が運営するギャラリーが3階にあり、プリントが仕上がるまで展示を見たり、新山清さんの作品を見せてもらったりお話をお伺いしていたのが最初のサブジェクティブ・フォトグラフィーとの出会いです。もともと新興写真や実験写真には興味があったのですが、新山清さんも含めて、サブジェクティブ・フォトグラフィーの写真家たちのことは全く知りませんでした。その写真はどれも素晴らしく新鮮で、なにより写真に対する姿勢、態度がすごく純粋に感じ、共感するものが多々ありました。この作家たちが人目に触れる事なくネガやプリントが失われていくことは非常にもったいないし、あってはならないことのように思い、自分ができる事はやりたいということで洋一さんの協力もあり第一弾として今回の展示が実現しました。」

 

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(C)Niiyama Kiyoshi

 


 新山の写真を一見して感じるのは、形態に対する鋭い感覚と高い構成力である。その力を静止した被写体のみならず、一瞬の動きを捉える際にも発揮し、また相似形の連続パターンによるリズム感のある構成にも長けていたようだ。そのモダニスティックな造形性は緊張感を保ちつつも、現代の我々が見るとどこかしら郷愁をそそられるものとなっている。それはアマチュアとプロとの境界が曖昧かつ「イズム」による表現がまだ可能であった時代の、写真を愛し追究するものの情熱が一心に結実し得た最後の精華の一つだったのではないだろうか。今後のスタジオ35分による「Subjective Photography」シリーズの展開にも期待したい。

 

スタジオ35分
164-0002 東京都中野区上高田5-47-8
35minutesonly@gmail.com  

http://www.35fn.com

 

参考
新山 清を中心とした主観主義写真〈2014.12.25.No.91/河野和典〉
http://studioray.blog.jp/archives/153108.html

 

Artwords 主観主義写真(主観的写真)
冨山由紀子
http://artscape.jp/artword/index.php/主観主義写真(主観的写真)