「ウルトラマリンブルーと群青色 」三木学
先日、「世界ふしぎ発見」の特集は金沢だった。東京と金沢が北陸新幹線で結ばれるのを前に各番組がこぞって特集をしている。ちょっと驚いたのは、「成巽閣」の“群青の間”と言われる部屋の天井が深く鮮やかな青色だったことだ。
このようなフランス的な青は珍しいと一瞬思ったが、やはりその色は「ウルトラマリンブルー」であり、フランスから顔料を輸入したとのことだった。
ウルトラマリンとは、ラピスラズリという鉱物を原料としており、アフガニスタンやペルシャで採取されたことから、「海の向こう」(ヨーロッパから見て地中海の向こうという意味)という名前になっている。それは、日本にも渡り、「瑠璃色」となった。瑠璃は青い宝石や青いガラス質のことだが、ラピスラズリだった可能性もある。
群青色は、瑠璃を原料とした色なので、ラピスラズリを原料としたウルトラマリンと系譜は同じだといえ、フランスのウルトラマリンを群青色と翻訳したのは的確だったといえる。また、ウルトラマリンは聖母マリアの色となり、瑠璃色、群青色も仏教美術で使われていたので、高貴な色ということで共通性がある。
ただし、「成巽閣」のウルトラマリンの方がより鮮やかだと思う。その理由は、1828年に人工のウルトラマリンの製法がフランスの化学者ギメによって発見され、1830年には工業生産されるようになったからだ。「成巽閣」の群青はおそらく人工顔料だろう。年代の符号も合う。加賀藩主、前田斉泰は19世紀の最新の人工顔料をすでに輸入していたのである。
どちらにせよ、江戸時代にフランス的な色が輸入され、日本家屋と融合されていた例として非常に興味深い。
人工ウルトラマリンを開発したジャン・バチスト・ギメの息子は、東洋美術コレクションで有名なギメ美術館を建てた実業家のエミール・ギメである。東洋との浅からぬ縁を感じる。
参考文献
新版 色の名前507―来歴から雑学、色データまで 日本の色、世界の色が見て読んでわかる
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