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「風景と色彩の同時対比」三木学

織物や絵画では単色だけで存在することはほとんどない。複数の色の組み合わせで存在する。しかし、色が複数になると色同士が干渉を起こす。そのことをシュブルールは「色彩の同時対比」という知覚現象としていち早く発見した。


シュブルールは国立ゴブラン織り工場の染色部門の監督官をしていたので、顧客の色違いを指摘するクレームからその現象を発見した。色は同じなのに隣り合う色によって色が変わって見えるからだ。それは広義の色彩による錯視である。

絵画や写真においても、配色によって色が変わる現象が起こる。そのことを突き詰めたのはスーラやシニャックなどの新印象派である。画像に含まれている色を色立体(色空間)に分布させることは、相互干渉する配色から単色の固まりに切り離すことでもある。

色彩の同時対比は日常風景の中でも起こっている。もちろん標識や看板のように意図的に誘目性や識別性を高めたものある。しかし立体空間における偶然の配色によって対比が起こりそれに反応して写真を撮影していることはあるだろう。

隣り合う色の対比が、知覚に及ぶ影響はある程度解明されている。しかし、個人差はあるし、眺めた時間によっても異なる。それぞれの知覚において発生している現象によって、シャッターは切られている。知覚の風景なのである。

色彩が豊かな多色配色の風景においては、色彩の同時対比が様々なレベルで起こっているはずだ。自然、建物、人々の服装などによる無限の色彩の組み合わせが日々起こっている。「フランスの色景」はその一端を明らかにしている。

写真を撮るということは、逆に言えば、両眼ではなく、一眼のフレームを通すことで、知覚的に色彩の同時対比が起こりやすい状況を自ら作っているともいえる。また、写真家はそれを半ば計算してフレーミングしているのだ。

参考文献

シュブルール 色彩の調和と配色のすべて

シュブルール 色彩の調和と配色のすべて

 

 

フランスの色景 -写真と色彩を巡る旅

フランスの色景 -写真と色彩を巡る旅

 

 

 

「新印象派 -光と色のドラマ-」公式図録

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