「景色と色彩風景学」三木学
Colors of the World: The Geography of Color
- 作者: Jean-Philippe Lenclos,Dominique Lenclos,Francois Barre,Gregory P. Bruhn
- 出版社/メーカー: W W Norton & Co Inc
- 発売日: 2004/04
- メディア: ペーパーバック
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フランスの著名なカラリスト、ジャン=フィリップ・ランクロは、フランス全土を周り、その地域の土を収集したり、風景を描写して体系的に地域の色彩を分析した。そのアプローチを「色彩地理学」と名付けている。
色彩地理学は、地域の土や建物の色、町並みのデッサン、写真など様々な角度から構成されるが、その概念の成立にはフランスの大地の色が地域によってかなり異なり、色合いが豊富だったことも大きいといえる。
人類最古の絵画でもある、ラスコーの壁画を含む南仏の壁画群には、イエローオーカーやレッドオーカーなど、赤や黄色の顔料となる土が使われている。土地自体が、色彩のパレットであったことが、絵画を生んだともいえる。
ランクロのアプローチが「色彩地理学」ならば『フランスの色景』は「色彩の風景学」といえるかもしれない。日常の中の視線、人々や交通機関の動き、昼と夜など写真というメディアを使い連続的に動いていく風景の中の色彩の構造を明らかにしようとしている。
景色(けしき)は、大和言葉で「風景」よりも古い。景という字は「日」と「京」から構成されている。京は光を意味するので、日の光を表す。つまり景色とは、太陽の光から生まれる色の世界ということになる。
基本的には、太陽光などからの光源色と、それから反射する光によって色は発生するので、景色とは的を得た言葉だといえる。つまり、我々が眺めるシーンには、光と色が内在しているのである。
参考文献