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「日本の伝統色名と染め」三木学

 

色の名前はどこからきたか―その意味と文化

色の名前はどこからきたか―その意味と文化

 

 バーリンとケイは世界の98言語を調査し、11の基本色彩語があることを発見した。11の基本色彩語とは、白、黒、赤、黄、緑、青、茶色、ピンク、オレンジ、グレーである。全ての社会が11語を持つわけではなく、文化が進化していくと7つの段階を経て最終的に11語に分かれるとされている。


基本色彩語を示す焦点色は、世界中ほぼ共通しているが、その境界や範囲は文化によってある程度差がある。一方で、固有色名は各国の文化によって、その数や分布はかなり異なる。固有色名の分布は文化と色彩感覚の差を表している。

個別の社会で使われる固有色名は、伝統色名、流行色名、慣用色名に分けられる。色名は時代によっても変動しているので、伝統色名や流行色名が、今日の社会で通じる慣用色名と一致するわけではない。

日本の慣用色名と言われるものは、主に江戸時代までに使われていた和色名と、明治以降、西洋を中心に輸入された外来色名に分けられる。和色名は植物染料を中心としており、ほぼ伝統色名と重なる。その染色の現場に触れる機会がなくなった今日では、ほとんど連想できないだろう。

日本の伝統色名に使われているトーンの修飾語は、色相によって異なる。茶色は白茶・焦茶、黄緑では若緑・老緑であり、緑、青、赤、紫では濃淡・深浅が使われる。特に青系の縹色の場合、高明度・低彩度から低明度・高彩度にかけて、薄、淡、浅、次、中、深、濃と段階が多い。

縹色も含めて、青系は藍染めの段階によって表現されることが多いが、濃く染めていくごとに、高明度・低彩度から低明度・高彩度になっていく。しかし、濃くする分、彩度が鈍くなるため、完全に鮮やかになる前に沈んでいくことになる。

このような天然染料による、染めの回数が、色調や価格と関係していた。色調が濃ければ、染の回数も多いため価格も高かった。染めの原理の理解が、日本の伝統色名の共通の理解になっていたといえる。

参考文献

 

日本の269色―JIS規格「物体色の色名」 (小学館文庫)

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