shadowtimesβ

ビジュアルレビューマガジン

スポンサーリンク

ダン・グレアム・野々村文宏作・谷本研画『まんがダン・グレアム物語』

 

漫画ダン・グレアム物語

漫画ダン・グレアム物語

 

 

この漫画は、60年代よりアメリカのコンセプチュアル・アート界を牽引してきた、ダン・グレアムの自伝を漫画化したものである。2001年にポルトガルの現代美術セラルヴェス美術館のカタログに掲載され、2004年に千葉美術館から始まった日本での巡回展「Dan Graham by Dan Graham」で増補・改訂され別冊で配布されたので記憶している方もいるかもしれない。その後、2009年にロサンゼルスMOCAから始まったアメリカでの大規模な回顧展「DAN GRAHAM: BEYOND」のカタログにも掲載された。

また、ダン・グレアムは建築と美術の中間的な作品である2ウェイミラー(ハーフミラー)を用いた「パヴィリオン」という作品シリーズでもよく知られており、日本でも瀬戸内国際芸術祭で話題になっている直島などに展示されているので見たことのある人もいるだろう。

それだけではなく、ユース・カルチャーやポップ・カルチャーの造詣も深く、彼の著作や作品に影響を受けたミュージシャンも多い。ソニック・ユースを結成したキム・ゴードンに音楽を薦めた張本人でもある。

そんな彼が新しいユース・カルチャーであり、美術とポップ・カルチャーを繋ぐものとして漫画に早くから目をつけ、漫画文化を発展させた日本人に回顧展に合わせて自分をモチーフにした漫画を依頼して出来たのが本作である。原作は、ダン・グレアムの友人であり、現代美術だけではなくポップ・カルチャー全般に造詣が深く批評活動を横断的にしている野々村文宏氏が担当し、漫画を京都市立芸術大学で現代美術を専攻し、デザイナー、漫画家でもある谷本研が担当した。

『ホームズ・フォー・アメリカ』に代表される60年代の擬似記事形式の作品を想起させる、日本の偉人伝の教育漫画に似せた本作は、ダン・グレアムの新しい挑戦であるとともに、60年代から今日に至るまでアートとポップ・カルチャーの間で横断的に活動し、俯瞰的なポジションにいるダン・グレアムの鏡像からそれぞれのシーンが浮かび上がってくる仕掛けになっており、時間を題材にした「パヴィリオン」とでも言える傑作である。

現在、アメリカの美術系大学でも研究素材として使われているというこの漫画は、日本でももっと評価されても良いだろう。未だ似たような試みを見ることはない。

野々村氏に谷本氏を紹介したのは他でもない私でありこの意欲的な試みの成功を我が事の如く喜んでいた。今回、電子書籍時代になり配布が簡単になったので、ダン・グレアム氏に依願して販売することの許諾を得た。

ダン・グレアム氏は日本でももっと読んで欲しいという思いがあるようなので、この場を借りて紹介させて頂くことにした。アートとして写真を表現手段にしている人間にとっては、彼の作品は多いに参考になり、刺激になるはずである。関心があれば是非、読んで頂きたい。

関連資料
http://www.art-it.asia/u/admin_interviews/TAv0MirHUF3qb6R5yKsm

matome.naver.jp

Graham Dan - by Dan Graham

Graham Dan - by Dan Graham