「グラフィックデザインの無意識」三木学
ライゾマティクスの流儀でグラフィックデザインに真っ向から対峙、「ライゾマティクス グラフィックデザインの死角」 | デザイン情報サイト[JDN]
パヒュームの舞台映像でも知られる、ライゾマティクスが、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(GGG)で展覧会を開催した。残念ながら見に行けなかったのだが、幸いなことにUstreamで講演会が放送されていたので、最後の回だけ聞いてだいたいの内容は把握することができた。
内容としては、田中一光、永井一正、福田繁雄、横尾忠則の4人のグラフィックデザイナーのデザインを解析し、データビジュアライゼーションを行うというものだったようだ。なぜこの4人か、というのはもちろん、戦後のグラフィックデザインを牽引したということと同時に、データ解析するためのアーカイブがあるということも要因だったとのこと。
配色についてのデータ解析は、国際照明委員会(CIE)の勧告した均等色空間であるL*a*b*表色系を使い、K平均法によってクラスタリング(分類)をして、各デザイナーの膨大なデータから10色程度を抽出しているようだ。
均等色空間とは、人間の知覚に比例して作られた空間であり、空間内においては距離と知覚差が比例する。そのことから、印刷や工業製品などの塗色において、色差が許容範囲内かなどを測る色空間として用いられていてる。
手法自体は、絵画の分析や景観分析などにも用いられるので珍しいわけではないが、研究分野では美しく見せることはあまりないので、精度が高い視覚化を行うことで新たな発見もあるだろう。ただし、L*a*b*表色系で色分布を行ってもわからない点がある。一つは、人間の知覚とは比例関係にあるが、もっとも人間の伝達で基本的な色名との対応関係がないこと。もう一つは、グラフィックデザインの配色とは平面上におけ色の関係で成り立っているので、同じ色でも横に並ぶ色が異なると、見え方がまるっきり変わってしまうこと。そのことを色彩対比や同化という。要するに色同士の干渉が知覚を変えてしまうのだ。
だから、どのような組み合わせなのか、ということを考慮に入れないと、全画像から色だけ抽出してプロット&クラスタリングしても、デザイナーの癖の一部しかわからないことになる。構成解析もしていたようだが、色彩とは別にしていたようだ。
ただ、近年、アルゴリズミック・デザインも流行しており、過去のデザイナーのデータ解析を行い、データビジュアライゼーションや、デザインの自動生成を行うのは意義があるだろう。
それをそのまま使えばよい作品が作れるか、と言われると時代状況が異なり、デザイナーに要求されることも変わっていくので難しいと思うが、デザイナーの無意識を構造的に表し、その遺伝子やエッセンスを後世に残すことで、新たな化学反応が起こると思われる。直接見れなかったことが残念だが、このような試みはこれからも、さまざまな人の手によって行われて欲しい。
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