shadowtimesβ

ビジュアルレビューマガジン

スポンサーリンク

職業としての翻訳家は可能か?「翻訳と翻訳サービス」三木学

togetter.com

 

出版業界の売上が年々減っており、それに関わる人たちの分配も減っている。なかでも海外出版物の翻訳業についてもなかなか状況は厳しいようだ。初版部数が減ることで、印税も削られる。概ね、出版に関する著者の報酬(印税など)は、発行部数に対する割合で決まるからだ。

 

特に海外出版物の出版部数も大幅に減っているようで、出版翻訳業を専業にすることが難しい時代が到来してるのかもしれない。

 

翻訳業を脅かしているのは、そのような出版業界の事情だけではない。Googleなどの機械翻訳サービスの精度はまだまだ参考程度だとしても、翻訳者のネットワーク、クラウドソーシングを駆使した、翻訳サービスも台頭してきており、価格破壊が起きている。

www.nikkei.com

 

ゲンゴのような多言語翻訳サービスは、近年、急速に広がっている。すでに契約翻訳者は、1万千人、35カ国語の翻訳に対応可能だ。

Gengo - 高品質で低価格な人力翻訳サービス

 

クラウドソーシングにより、135ヵ国以上に拡がる15,000人ものトランスレーターが、35ヵ国語を超える言語の翻訳に24時間対応しています。

 

それだけではない。1円5字から翻訳が可能であり、価格も非常に安い。安いだけではなく、24時間対応のため驚くほど早くそして、独自の校正ツールを使っているため、誤字脱字がほぼないといってよい。僕も何度か利用しているが、スタンダードと言われる一番安いプランでも十分高い品質を維持していた。

 

そして、翻訳者がすべてネイティブなので、日本語から英語に翻訳する際に必要なネイティブチェックが不要なのも大きい。翻訳者に依頼するのに、ネイティブチェックがいるのもおかしな話だが、翻訳した言語を母語とする人からみて文章の使い方がおかしくないかチェックをするのが慣習になっている。外国語から自国語に翻訳するのはまだハードルが低いが、自国語ではない言語に訳すのはそれほど難しいのだ。

 

個人的には、一部の文学作品以外は、ゲンゴのような翻訳サービスで十分だと思っている。もっと言えば、日本語から外国語に翻訳する場合は、ゲンゴのような翻訳サービスで訳した後に、日本人の翻訳者に、文脈がちゃんとあっているか再確認する逆ネイティブチェックをする方が効率的ではないかと考えている。ゲンゴなどは、文章のみから翻訳するので、文脈の理解で少しニュアンスの異なる単語に訳すことは起きてしまう。それらのチェックは必要だ。それは言わば校閲にあたるかもしれない。

 

だが、単純な誤字脱字についてはほぼ心配する必要はないのはありがたい。日本語ですら、誤字脱字がない文章はない。翻訳に誤字脱字がないか調べる校正は、悩ましい問題だからだ。

 

10年後に消える職業のリポートが以前あったが、翻訳業はなくならないまでも、かなり代替できる仕事として認知されていくはずである。そういう意味では、出版翻訳業ではなくても、翻訳専業として残るのは難しいかもしれない。今後、ますます代替不可能な価値を提供する仕事しか残らなくなってくだろう。その日が訪れるのは思いのほか早いかもしれない。

オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」702業種を徹底調査してわかった | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]

関連文献

 

職業としての小説家 (Switch library)

職業としての小説家 (Switch library)