shadowtimesβ

ビジュアルレビューマガジン

スポンサーリンク

車は色で分けられるか?「車の塗料と質感」三木学

car-rider.jp

 

車の色別の販売台数については、各自動車メーカーから日本流行色協会(JAFCA)で集められ、統計がとられている。したがって、年代毎の人気色の推移もわかるようになっている。

 

とはいえ、日本における車の色は主に無彩色の黒、白、シルバーであり、色付きの車の比率はそれほど多くはない。無彩色と色付きの車の販売台数の母数には格段の差があるため、色別で事故の比率を計算したとしてもあまり信用のあるデータにならないかもしれない。おそらく日本には色別の事故比率を計算するための元データはないだろう。

 

また、車の塗料には、色の他にも分類の仕方がある。ソリッドな塗料の他に、光沢性のあるメタリック塗料もある。メタリック塗料には、フレーク状のアルミニウム顔料やパールマイカ(白雲母に酸化チタンをコーティングしたもの)顔料などが用いられきた。近年では、エフェクト顔料と言われる、さらに複雑な光干渉を起こす顔料も使われている。

 

それが、色に加えて独特な質感を車に与えている。だから、単純に色だけで眼への刺激を語るのは難しい。多重反射する塗料では、同じ色でも見え方が全然違うからだ。

 

日本人は特に塗料の質感についてあくなき追求をしているといってよい。白は白でも、無数の白があるのだ。そもそも日本人は色と質感を分けて考えてない可能性がある。例えば、つるつるした白、てかてかした白、ピカピカした白、ドロドロとした白、ヌルヌルとした白、じゅるじゅるとした白と言ったように、微細な白の質感を感じ取っている。それを一括して色だけの視点で白と分割することに問題があるといえる。

 

特に車の塗料は、色と質感についてもっともお金が投じられ、探求されている分野だといえる。高い塗料だと5層程度、塗料が塗られて微妙な色と質感を生み出している。最近では、無彩色や赤、青、黄色といったポピュラーな色だけではなく、微妙な中間色相も販売されるようになっている。車の塗料こそ、色と質感の最前線なのだ。

 

車の事故の調査も色別ではなく、ソリッド、メタリック、パールマイカなど、質感によって分けてみると新たなことがわかるかもしれない。事故がしにくい質感というものがわかれば、塗料の開発も別の視点が加わるだろう。乱反射する光干渉や多重光干渉する塗料だと事故が起こる可能性も少ないかもしれない。

 

日本人ならではの繊細な質感感覚は、色の世界も変える可能性があるといえるだろう。

 

参考文献

 

トコトンやさしい塗料の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)

トコトンやさしい塗料の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)