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枠を軽やかに超える現代の文人画家-ミヤケマイ展「長い不在」三木学

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ミヤケマイ展「長い不在」展示風景

 11月6日(金)~23日(月・祝)まで。

http://www.fukuwauchi-gion.com/gallery

 

ミヤケさんのことを知ったのは、shadowtiemsがフォトメールマガジンだった頃のことで、POLA MUSEUM ANNEX で2013年に開催された「白粉花」展について、港千尋さんの展評を掲載させて頂いた。

 

それから交遊があり、京都に来られた際にお会いしたりしたのだけれど、東京での展覧会などにはなかなか行くことができず、また関西では展覧会が行われることはなく残念に思っていた。

 

ミヤケさんは、今年、坂茂の設計により開館した注目の美術館、大分県立美術館(OPAM)で大規模な常設展示のプロジェクトも手掛けており、これも行きたいと思っていてなかなか行けていない場所の一つである。OPAMもさることながら、ミヤケさん自身、今もっとも活躍しているアーティストの一人だといえるだろう。

アトリウム展示・3階屋外展示のご案内 | ニュース | 大分県立美術館(OPAM)

 

ミヤケさんはフランスに留学したことがあり、当時僕も港千尋さんとフランスの配色や色彩感覚について分析していたこともあって、日仏の色彩感覚の違いについていろいろ話し、盛り上がっていた。ミヤケさんは、個展白粉花」も含め、色をテーマにした作品も多い。

 

しかし、その作品の幅は広く、捉え難い。絵も上手いが、文章も上手い。そして、マルチプルのデザインから、大規模なインスタレーションまで何でもこなす。作品から醸し出す自由さと機転、滑稽、諧謔がその本質かもしれない。メールで文人画家のような印象があると書いたことがあるが、それは褒め言葉だと回答が返ってきた。文人画は明治以降の美術史では、正当に評価されてこなかったところがある。しかし、与謝蕪村が再評価されているように、れっきとして日本美術の中核にあると同時に、俳諧、日本文学への影響も考えれば日本精神の核心であるといっても過言ではない。

 

そのミヤケさんの展覧会が、京都で開催されるとのこのことで、ちょうど京都国立博物館の「琳派 京を彩る」展と会期が重なっていることもあり、帰りに立ち寄ることにした。

 

展覧会場は、京阪三条を少し南に下ったところで、骨董・古美術街にあたる。会場となっていたCAFE GALLERYフク和ウチは、町屋を改修したようなところで、雰囲気がよく喫茶をしながら展示を見ることができる。60分待ってごった返しの中で見た「琳派 京を彩る」展の帰りだったので、その小さな空間が身体にとても馴染んで心地よい。

 

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「七日の猫-卯月」

肝心の展覧会は、従来の五節句に加え、現代の節句として、お花見とクリスマスを加えた七節句にして、季節の移り変わりを描いた版画「七日の猫」が展示されていた。名前のとおり、猫を主役に季節の変化を表しており、単なる風景描写ではなく、感情移入がしやすくなっている。その表情や仕草の豊かさから、歌川国芳葛飾北斎など、猫を愛した画家は多く、節句の七日で1年を表すための擬人的なモチーフとして最適だといえる。

【猫好き浮世絵師】天才・歌川国芳が描いたネコたちがおもしろ可愛い【猫づくし】 | 幕末ガイド

 

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また、小物、お菓子、護符!?など、洒落の効いたお土産もたくさん売られており、細かいところまで凝っている点には感心するしかなかった。特にミヤケさんのオススメは、「さいコロがし」という、サイコロとお菓子をかけ、サイコロを模したお菓子に包み紙が「アーティスト双六」になっているお土産ということで、買って帰ることにした。

 

アーティスト双六の中身を抜粋すると、

「国立美大にこだわり浪人する」
「個展をしたけど友達と親戚しかこなかった」
「外国で言葉が通じずホームシックになってノイローゼになる」
「芸術とは何かという討論に飽きる」
奨学金に味をしめレジデンスジプシーになり流浪の民状態」

 

などなど、美大生・アーティストあるあるのようになっており、思わず苦笑いしてしまう。あがりは、「好きな事をして飢えず、親・親戚に迷惑をかけることなく一生を終える」というから、まさにミヤケさんの真理といったところかもしれない。もちろんもっと野心のある人もいるだろうが、だいたいアーティストになりたい人の初期の動機は、誰からも命令されることなく、好きな事をして食べていきたい、という夢想的な願望だろう。

 

ミヤケさんの作品は、日本の美術や工芸、モチーフを扱いながら、形も色彩も自覚的かどうかは別としてどこかズレている。詳しく色彩分析はしていないが、純粋な日本の配色とは言い難い。逆に、西洋的なユーモアやエスプリというより、日本的な滑稽や諧謔という印象であり、その捻じれが面白さであり、捉えどころのなさにもなっている。ただ、そもそも捉えられることは好まないだろうし、理解しようとするとひらりとかわす身のこなしこそが、ミヤケさんの作品の魅力だろう。京都でミヤケさんの作品を見る機会は珍しいので、琳派展の後にでも是非足を運んで頂きたい。

 

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