shadowtimesβ

ビジュアルレビューマガジン

スポンサーリンク

贋作が生み出す才能「贋作という伝統文化」三木学

jp.wsj.com

www.afpbb.com

 

中国の広州にある大学の画廊に務める元学芸員が、8年にわたり約143点を盗み、自ら制作した贋作とすり替え、本物を売却して7億円の利益を得ていたというニュースが流れてきた。

 

 

しかし、驚くべきは、本物と見まごう贋作を作る能力と、元学芸員の贋作も誰かの作品とすり替えられていたという事実だった。さらに、盗んだ作品の中に張大千が含まれていることだ。張大千は斉白石と並び20世紀中国でもっとも偉大な画家とされる。

 

同時に、名画の贋作作りで大金を作り出したことでも有名だ。ただ、張大千が贋作をしたのには理由があるとされる。1940年から約2年7ヶ月、敦煌の莫高窟に住み、模写をするにあたり、大量の資金が必要だった。また、伝統的な中国美術の訓練法は、写生ではなく、古画の模写によって習得されるとされている。だから、元々贋作を作るためというより、絵画技法の向上は、模写によって養われるという伝統に沿ったということかもしれない。

 

ルネサンスの工房にもおいても、親方からある種のライセンスを得て、模写を作ることはある。琳派の『風神雷神図』も見方を変えれば贋作になってしまう。それこそ酒井抱一は、散々、尾形光琳の絵を模写して技術を習得している。

 

張大千は、中国が生んだ偉大な天才であるが、日本の京都芸術専門学校(京都市立芸術大学の前身)に3年間留学し染織を学んでいる。だから、日本の美術には造詣が深く、彼が作り出したぼかしの技法「溌墨」も、琳派の「垂らしこみ」にヒントを得ているという説もある。筆や絵の具、紙なども好んで日本製を使っていたという。そういう意味では、張大千もまた琳派の影響を受けた一人だといえよう。

 

張大千の贋作は、すでに張大千自体がブランドになっているため、贋作であってもオークションで高値で取り引きされている。今回の元学芸員は、絵画の技術習得が目的ではないだろうが、これを機会に画家に転向したら一つのエピソードとしては面白いだろう。

 

盗品のための贋作は褒められたものではないが、この機会に絵画の技術習得のための模写の効果について再考してもいいだろう。

 

関連書籍

 

紀念張大千誕辰一百一十周年大風堂書画集(中国語)

紀念張大千誕辰一百一十周年大風堂書画集(中国語)

  • 作者: 屠際春,張大千(1899-1983)は中国近代の著名画家。本書は、張大千及其絵画芸術的分期(汪毅)など記念文章10篇、丁翰源・田世光・何海霞・王永年・徐伯清ら弟子29名の作品、丁世彦・{登β}由懐・伍文全・劉楽一・李承毅・張伯玉・陳沫吾・金偉民・唐山ら再伝弟子96名の作品を収録。カラー。
  • 出版社/メーカー: 文匯出版社
  • 発売日: 2009/05/01
  • メディア: 大型本
  • クリック: 1回
  • この商品を含むブログを見る