読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

shadowtimesβ

ビジュアルレビューマガジン

スポンサーリンク

部屋の中にアートはあるか?「飾り棚からアート棚へ」三木学

アート 建築 デザイン

 

ペナント・ジャパン

ペナント・ジャパン

 

 

近年、日本各地でもアートフェアが開催されている。アートフェアとは、現代アート作品の即売会のようなものだが、展示場のような場所で開催されることもあれば、ホテルの部屋を1階分まるごと借りて行われることもある。そこにはコレクターが集まって、たくさんの作品を買っていく…ということなのだが、日本ではまだまだそこまで文化は広まってないかもしれない。

 

現代アートにおいて、コレクターと呼べるような人は日本では数えるほどしかいない。高橋コレクションなどはその著名な例であるが、世界にはゴロゴロいて、アーティストの有名無名に関わらず、気に入った作品を購入することで、彼らはアートパワーを構成する重要なプレイヤーになっている。

 http://www.takahashi-collection.com/

 

日本ではそのような力のあるコレクターは稀にしかいないにせよ、現代アートが売買の対象として認知されてきていることはよいことである。哀しいかな日本では現代アートの市場すらほとんど形成されてなかったので、グローバリズムや資本主義批判のアート作品を日本人が作ったところで、やや机上の空論といった形になる。日本ではそれよりも、まずはまっとうな現代アートの市場を作る方が健全であるという倒錯がある。

 

現代アートの市場が形成されない原因として、アートに対して教養のあるお金持ちがほとんどいないことが大きい。その主な理由は、戦後の財閥解体や農地解放により戦前にアートのコレクターとなっていた資産家がいなくなり、累進課税制度により新たな資産家が生まれにくくなっていることが挙げられる。

 

それは現在でも解消されたとは言えないが、その代りに漫画やアニメなどの大衆文化が花開いた。今日では日本のポップカルチャーは世界的に評価されているので、現代アートが浸透していないことが必ずしも悪いことだとはいえない。現代アートも日本のポップカルチャーの多大な影響を受けているからだ。

 

それはともあれ、美大・芸大生の悩みとして、作品は作ったものの置き場がない、ということがある。たいてい自分の部屋には置けないような大きな作品を作るので保管するにも苦労するのだ。自分の部屋にも飾れない作品を作り続けるのもある種の倒錯だといえるだろう。

 

僕らはかつて戦後において部屋での展示で何があったか考察したことがある。アートといっても空間とは切り離せないからである。結論としては、子供部屋に飾られていた観光ペナントこそ、戦後を代表する展示文化だということになった。その考察は一冊の本になったので関心のあるか方は是非読んで頂きたい。

 

ペナント・ジャパン

ペナント・ジャパン

 

 

アートフェアを見に行ったときも、未だに気になるのはそれが部屋にどのようにして飾られるかという点である。日本の家には現代アートを飾るような空間もなければ保管するような空間も装置もほとんどない。まして賃貸なら額を立てかけるための釘も打つことができない。

 

だから、アート作品を売ると同時に、作品の収納もできる展示棚を作って売るべきだと言うのが前々からの持論である。それは何度もアーティストやギャラリスト、建築家などに提案していて、その場では大いに賛同をされるのだが実現したためしがない。それだけの需要がないのか、僕の提案が机上の空論なのか理由はわからない。ともかく10年以上は言い続けているだろう。

 

昨日、Eテレの『美の壺』を見ていたらちょうど「棚」がテーマになっており、日本の「飾り棚」が紹介されていた。それは極めて僕の言っていたアートのための展示棚のコンセプトに近い。収納する機能もあり、物を置くことによって初めて棚として魅力的になる飾り棚は、現代アートの作品を置くための棚を作る際ににも大いに参考になるだろう。

www.nhk.or.jp

番組では、修学院離宮の飾り棚が、フランスの建築家、デザイナーのシャルロット・ぺリアンに大きなインスピレーションを与え、革新的な棚のデザインを生み出したと紹介されていた。

宮内庁参観案内:施設情報:修学院離宮

シャルロット・ペリアン - Wikipedia

 526 NUAGE(ニュアージュ) Cassina | カッシーナ・イクスシー

www.hiroshima-moca.jp

シャルロット・ぺリアンの棚は、まさにアート作品や本などを置いたり、収納したりするのに適しており、僕の提案しているアートのための棚に近い。やっぱり自分の考えていることは間違ってなかったのだという思いを新たにしたが、それが実証されるのは、建築家やデザイナーがアートのための棚をどんどん制作して、アートフェアなどと連動して販売されるときだろう。是非、そのような人物が出てくることを期待している。

 

参考・関連文献

 

ペナント・ジャパン

ペナント・ジャパン

 

 

 

シャルロット・ペリアン自伝

シャルロット・ペリアン自伝

 

 

Charlotte Perriand: Complete Works: 1940-1955

Charlotte Perriand: Complete Works: 1940-1955

 

 

 

Charlotte Perriand (Memoire)

Charlotte Perriand (Memoire)

 

 

 

Charlotte Perriand: A Life of Creation

Charlotte Perriand: A Life of Creation