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ビジュアルレビューマガジン

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めくらない巨大な絵本『Big Book おおきなかぶ 』『うらしまたろう』(青幻舎)三木学

書評

 

Big Book おおきなかぶ

Big Book おおきなかぶ

 

 

Big Book うらしまたろう

Big Book うらしまたろう

 

 

bigbook

Big Book おおきなかぶ | 青幻舎 SEIGENSHA Art Publishing, Inc.

Big Book うらしまたろう | 青幻舎 SEIGENSHA Art Publishing, Inc.

 

360度開いてくり抜かれたページをまたぎながら物語が展開される、360°BOOKなど、規格外のユニークな本を企画することで今やすっかり青幻舎の名物編集者になった、苑田大士くんがまた新たな「本」をプロデュースしたことを知らせてくれた。

 

今度は巨大な絵本である。とはいっても、ページをめくったりはしない。折りたたまれた巨大な紙を最初からすべて開くことで初めて絵本になる。これは本という構造を根本的に無視したもので、もはや本とはいえないかもしれない。なぜなら、本は閉じられた、あるいは綴じられた束を少しずつめくることで物語が展開されるからだ。つまりこの本はネタが最初からばれてしまっているのだ。

 

ただし、この本の作りには大いに賛同するところがある。一応、子供用に想定されたこの本は、逆にいえばめくらなくてよい。絵本をめくらなければならないというのはこれまた根本的な欠点でもある。なぜなら、幼児はめくることが得意ではない。だから、どうしても紙を厚くして持ちやすくするか、両親がめくらなければならない。それでもうまくめくれないこともあるし、両親にしても横に寄り添いながらなら可能かもしれないが、紙芝居のように見せる場合、読み聞かせをするためには、どうしても角度をつけなければならないからだ。

 

これは以前から考えていた欠点で、幼児向けの本は、巻物のような「綴じない」構造の方が向いているかもしれないと思っていた。このBig Bookシリーズは、そのことを突き詰めたかどうかはわからないが、大胆にも綴じない方法を採用している。綴じない一枚の紙を「本」と呼べるのかはわからないが、それゆえに盲点をついた魅力的な見世物になっているといえる。

 

最初からネタがばれてしまっている、と先に書いたが、「おおきなかぶ」という誰もが知っている童話をテーマにした1冊では、横2メートルにも及ぶ巨大なかぶに、虫や鳥など小さな動物が細かく描かれており、一瞬では把握できない発見がたくさん散りばめられているし、同じく「うらしまたろう」には、巨大なウミガメの周辺に貝殻やサンゴなどが散りばめられており、巨大な絵と小さな絵を対比的に描くことで、視点の誘導を行っているといえる。そのあたりのサイズ差とフォーカスがもたらす複眼的な視点誘導による物語の発生が、新たな本の可能性を開いているといえるだろう。

 

とはいえ、そのような細かな指摘よりも、巨大な絵を体験できるという利点が一番大きく、子供たちにとっては最初に見る、触ることのできる巨大な絵になるかもしれない。体験するというのはそれだけ危険をともなうので、紙質には相当こだわったと思われる。子供が乱暴に扱っても、くしゃくしゃにしても復元性があり、耐水性も備えているという。紙は角があり手や肌が切れることもあるので、その辺の工夫は製品としても大事なところだろう。

 

ともあれ、本の可能性をまた一つ開く本が出来たといってもよい。この本を読む子供たちが実際どのような反応をするのか楽しみではある。是非ワークショップなども開催してほしいところだ。ひとまず、本を題材にした、作者と苑田くんのワクワクする冒険を僕も楽しみたい。

 

参考文献

 

shadowtimes.hatenablog.com