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ビジュアルレビューマガジン

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創作はどこへいくのか?「カメラの自動化の行方」三木学

写真

【カメラ革命】MITが「絶対に白飛びしない」技術を開発。もう絞りや露出に悩されない日々へ:DDN JAPAN

 

MITが白とびしない技術を開発しているという。これはカメラにおける適正露出という根本命題に手を突っ込んだということに等しい。カメラは、絞り、シャッター速度、感度という3つのパラメーターによって、露出(EV)が決定される。

 

しかし、写真がとれる再現可能領域(ダイナミックレンジ、フィル時代はラチチュード)は決まっている。デジタルカメラは、だいたいポジフィルムと同じ程度のダイナミックレンジだと言われており、5EV程度である。フィルムカメラはもっと広い。

人間の眼は、曇りで約7EV、晴天時は10EV以上の明るさの差を認識できるとされており、ダイナミックレンジに関しては、デジタルカメラよりも人間の眼の精度の方がまだまだ優れている。

 

被写体の光に合わせて、上手く露出の再現可能領域に入れることを適正露出というが、明るすぎると露出オーバー(白トビ)し、暗すぎると露出アンダー(黒つぶれ)してしまう。

 

最近では、RAWデータで撮影しておいて、後で露出を調整する場合もあるし、露出の異なる写真を複数枚撮影しておいて、写真を合成するHDR(ハイダイナミックレンジ)を使うことで、ダイナミックレンジを大幅に広げるという方法もある。

 

しかし、絞り、シャッター速度、感度を調整して、どのように露出をコントロールするかが、写真家のもっとも重要な表現であることは変わりはない。それだけに、まず初心者が一眼レフカメラを購入したときに、理解につまづくのが絞り、シャッター速度、感度と露出との相関関係になる。それによって、ピント(フォーカス)が合う距離である被写界深度なども変わってくる。その選択の仕方が表現だといってもいい。

 

しかし、MITが今回開発したアルゴリズム『Modulo Camera』は、ダイナミックレンジから外れないようにたくさんのデータを蓄積した上で、カメラが最適な露出を決定してくれるという。

 

こうなると、ますますカメラの自動化は進むだろう。しかし、今よりも誰が撮影しても同じ、という雰囲気になるかもしれない。近年、撮影素子に複眼的な装置をつけることで、ピントを後で合わすことのできる、ライトフィールドカメラが話題になっているが、事後的に露出を自在に調整することも可能になるだろう。写真の美学である「決定的瞬間」はもうずいぶん過去の話になりつつある。

 

それは自動運転自動車の歴史に似ている。将来的に人間は、カメラを持たなくても眼鏡と脳が結ばれ、関心があると脳が判断すれば勝手にシャッターが押されるという時代も来るだろう。

 

思えばカメラは、ずっと自動化に向けて進化してきた。シャッター優先オート、絞り優先オート、プログラムオート、オートフォーカス、シーン別オート、さらに手ブレ補正などなど。カメラメーカーの開発のモチベーションは誰がとっても綺麗に撮影できる、ということだった。それは、自動車がマニアルから、オート、自動運転に進化していることと似ている。

 

しかし、一方で、高額な一眼レフを買う愛好家は、自分で選択し、判断することを求めており、そこに創作性が現われてくるのも確かである。高級カメラと、スマホなどの違いは、自分で選ぶ選択肢が多いか、少ないかでもある。

 

一方で、高級な一眼レフカメラにおいても、内部の画像処理がブラックボックス化していっているのは確かであり、写真家の意志とは関係なく、動いている場合も多い。自動化が進むにつれ、似た写真ばかりが多くなり、写真家の個性も消えていく。そして、写真家にとって創作とは何なのか?という問題にいきあたる。これ以上自動化が進むと、今話題になっているデザイン以上に、写真家の創作性は問われてくるかもしれない。

 

写真にとっては、自由意志による各種パラメーターの選択が、創作性と一番関わるところだけに、メーカーが自動化と非自動化という異なる写真家のニーズをどのように満たしていくのか気になるところである。

 

参考文献

 

ナショナルジオグラフィック プロの撮り方 露出を極める

ナショナルジオグラフィック プロの撮り方 露出を極める

  • 作者: ブライアン・ピーターソン,ナショナルジオグラフィック,武田正紀,関利枝子
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2013/02/21
  • メディア: 単行本
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