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赤に性欲を覚えるわけ「赤い色と色覚の謎」三木学

toyokeizai.net

 

欧米の科学ジャーナルに、「赤色」に関する論文が続々と発表され、「赤を身につけた異性とセックスしたくなる」という研究結果が出ているという。人の感情や行動規範が、潜在意識ではなく、環境刺激によって左右されるという仮説は、「身体化された認知(Embodied Cognition)」と呼ばれ、心理学のタームとなっているとのことだ。

 

アメリカのロチェスター大学は色彩研究ではよく知られており、2008年に「男性は赤を身につけた女性を見ると、セックスしたくなる」という論文を発表した。テルアビブ大学のタルマ・ローベルは、その実験をさらに進め、女性の美醜によって三段階に分けて実験した。

 

つまり、女性を美醜によって、上、中、下のグループに分けて実験したという。まるで、映画「ソーシャル・ネットワーク」の美人コンテストの調査のようで、どうやって分類したのかも、人権的に問題なかったのかも気になるところであるがその結論がもっと凄い。すべてのグループに女性に性的な魅力が増す結果となったが、中のグループがもっとも効果があったというのだ。つまり、男性が加もなく不可もなくと考えいる女性が、もっとも性的な魅力が増したというのだ。まるで男性の下心を喝破したような結論だが、研究は極めて真面目に行われているようだ。

 

そして、ロチェスター大学の研究では、女性を性的に魅力的に見せた原因を回答者に聞いており、表情、服装、色などの要素の中で、色が一番少なかったことから、色の影響は自覚的ではなく、無意識であるというのだ。つまり「身体化された認知(Embodied Cognition)」ということになる。

 

それは男性にも当てはまり、赤いネクタイを付けることで「地位が高い」という印象を与えることができるという。このような赤色の効果は、JFKが討論番組で身に付けた「赤いネクタイ」の例でも知られており、カラーコンサルタントの間では1960年代から実践されてきた。それが2000年代以降、実験心理学の分野で徐々に詳細に解明されてきたということだろう。スポーツなどの分野でも、同等程度の実力ならば、赤色を付けている方が勝率が高いことがわかっている。また、「赤い服を着た男性は青やグレーの服を着ている男性よりも怒って支配的に見える」という論文も提出されている。

www.afpbb.com

 

カリフォルニア工科大学の神経生物学者、マーク・チャンギジーの書いた『ひとの目、驚異の進化』によると、人間がカラフルな色覚を獲得したのは、他の類人猿と比べて肌が露出したことによって、肌の色の変化からその人の状態を見極められるように進化からだという。肌の色がその人の気分や体調の変化を表しており、それを感知することができるようになったのだ。

 

肌の色は、血液の二つの変数に左右されている。つまり、血液の量と、その血液の酸素飽和度である。流れる血液がふだんよりも少なければ、肌は黄色っぽく見える。血液の量が多いと青みがかって見える。酸素飽和度が高いと、赤みがかって見える。酸素飽和度が低いと、緑みを帯びて見える。つまり、肌色の中にすべての色が含まれているというわけだ。

 

その二つの変数を組み合すと肌はどんな色合いにもなれる。血液の量を減らし、酸素飽和度を下げることで、黄色-緑になる。血液の量を増やし、酸素飽和度を下げれば、青-緑になる。血液の量を増やし、酸素飽和度を上げれば、青-赤(紫)になる。血液の量を減らし、酸素飽和度を上げれば、黄-赤(オレンジ)になるのだ。

 

メスのお尻が赤ければ、酸素飽和度が高いことを表し、オスは発情する。オスの顔が赤ければ、酸素飽和度が高く、戦闘準備ができているというわけだ。つまり、男性が赤色をつけている女性に欲情したり、女性た男性の赤いネクタイに「地位の高さ」を感じるのは、肌の色を読み取る色覚と結びついた無意識レベルの反応といえるかもしれない。我々は思った以上に、環境の刺激に影響され、同時に生物的な本能に支配されているということがいえるかもしれない。 

 

 参考文献

ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ

ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ

 

 

パーソナルカラーの教科書

パーソナルカラーの教科書

 

 

よくわかる色彩心理 (図解雑学)

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