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何が問題か?知的財産権と契約(3)「国立競技場再コンペ(6)」三木学

建築 東京五輪

www.sankei.com

 

JSCがザハ事務所に対して、デザイン料の未納分を支払う代わりに、著作権譲渡とこの件に関して口出ししないで欲しい、という要請をし、ザハ事務所から断られたことがわかった。

 

このことは、以前書いたように、おおむね予想されていた事態なのだが、簡単に整理しておく。

 

前回案で、ザハ事務所はJSCと著作権を含む知的財産権に関して契約を行っていた。これには明らかに著作権に含まれるものだけではなく、スタンドの配置などデザイン・設計に関する広範囲にわたってザハ事務所の権利とするものだったと報道されている。

 

白紙撤回されたからといって、デザイン料は当然支払わなければならないが、それ以外の知的財産権に関してもザハ事務所に残ったことになる。そのままザハ事務所の設計したものを一切使わなければ、デザイン料を支払えば済んだ話である。

 

しかし、再コンペで採用されたA案の、特にスタンド部分に関して、ザハ案を流用している可能性が指摘されていた。もしそのまま作ればJSCは契約違反である。ザハ事務所の設計を使用するには、ザハ事務所と利用許諾契約を再度結ばないといけない。しかし、12月の時点では、それは事業者が処理する問題であると、JSCも五輪担当大臣も答えていた。

 

これは明らかに勘違いで、当然事業主体、契約主体のJSCが対処しなければならないし、訴訟されるのはJSCに他ならない。今年に入って、おそらく内外からそのような指摘があったのだろう。それで著作権の譲渡をザハ側に求めたと思われる。

 

しかし、ザハ事務所からすれば、デザイン料に未納分があれば、支払われるのは当然であるし、それに加えて、著作権譲渡を求めるのであれば、それ以上の対価が提示されなければ受ける必然性はない。しかも、譲渡契約であれば、クレジットさえ残らない可能性が出てくる。そのような不躾で失礼な契約を結ぶ可能性は極めて低い。通常は、利用許諾契約を提案するのが普通だろう。

 

しかし、JSCにすれば、追加でお金を支払うことになれば、国民からクレームが来るのは想定されただろうし、A案にザハ案が流用されているとしたら、コンペの条項違反になり、そもそも資格がはく奪されてもおかしくはない。そのような事態を避けたかったということはあるかもしれない。

 

どちらにせよ、そのような日本国内の事情など、ザハ事務所にとったら無関係であるし、契約上不当なことをされたら、訴訟するのが自然だろう。国内なら、そのような理不尽なことがあっても、うやむやにされる可能性はあるが、国際的にはそうはいかない。

 

おそらく、A案でいきたいのであれば、本来はザハ事務所と知的財産権に関する利用許諾契約を再度結び、ロイヤリティを支払わないと駄目だろう。しかし、それではA案のコンペの条項違反を認めることになるし、追加料金も発生する(それ以前にJSCは白紙撤回で建設されなくなったという理由で、デザイン料を完全に支払っていないようで、それ自体で訴訟される可能性もある)。
しかし、今回のように、さらに無理な提案をして訴訟されたら、A案の差し止め請求も行われるだろう。そうするとスケジュール自体が遅れる可能性があるため、B案が再浮上する可能性も高くなってきたかもしれない。

 

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