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「音の風景、色の風景」三木学

ヨーロッパの色彩は、キリスト教を基にした象徴体系を経ているが、カソリックと華美な色彩を抑制したプロテスタントでは系譜が分かれる。それが現在の色彩環境にも少なからず影響している。日本では聖徳太子の冠位十二階に代表されるように、陰陽五行思想の象徴体系を基本に色も構成されてきた。

カナダの作曲家、マリー・シェーファーは『世界の調律』において、音楽ではない音の環境(音の風景)、サウンド・スケープを提唱し、バンクーバーの教会の音の聞こえる範囲が、時代を経るごとに狭くなることを報告している。それは交通などの近代化とともに教会への帰属意識が弱くなったことの証明となっている。

音楽学者の中川真は『平安京 音の宇宙』において、京都の鐘の音が陰陽五行思想に基づいて東西南北で調律が決められていることを報告している。そのような音の象徴体系のように、色の象徴体系も、景観の中で変遷していくといえる。

中世の象徴体系は、近代化した現在の色の風景の中でも、顔をのぞかせることがある。全ての象徴体系がなくなるわけではなく、地域や風景、色彩感覚の中の古層に息づく象徴体系と、新しい色彩感覚が混じり合って色の風景=色景が生まれている。

 

参考文献

 

 

ヨーロッパの色彩

ヨーロッパの色彩

 

 

世界の調律―サウンドスケープとはなにか (テオリア叢書)

世界の調律―サウンドスケープとはなにか (テオリア叢書)

 

 

世界の調律 サウンドスケープとはなにか (平凡社ライブラリー)

世界の調律 サウンドスケープとはなにか (平凡社ライブラリー)

 

 

平安京 音の宇宙

平安京 音の宇宙

 

 

平安京 音の宇宙―サウンドスケープへの旅 (平凡社ライブラリー (508))

平安京 音の宇宙―サウンドスケープへの旅 (平凡社ライブラリー (508))

 

 

フランスの色景 -写真と色彩を巡る旅

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