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「逃げ去る色彩と決定的配色」三木学

 

フランスの色景 -写真と色彩を巡る旅

フランスの色景 -写真と色彩を巡る旅

 

「フランスの色景」は、色相環の反対色である補色の配色が多い。補色は街中にあり、様々な対となる配色に彩られている。それらが瞬間瞬間で、新しい補色や色相環で十字に交わる交差を作り出す。その複雑な組み合わせは豊かな配色を生み出しており、写真家によってその瞬間が切り出される。


サインやパッケージなど人工的に計算されたデザインも、街中に置かれると、それは新たな色の関係性を作り出すピースになる。その複雑な関係を一人のデザイナーがコントロールすることは不可能だ。後は見る側がいかに切り取るかにかかっている。スナップショットは見るデザインである。

風景から配色を切り取ることは、写真家にしかできない。それは瞬間のデザインであり、環境と身体と脳の完璧なコラボレーションによって生み出される。その3つが瞬間的に合致したとき、風景は素晴らしい色景として自覚される。

風景は常に動き、イメージは逃げ去っていく。アンリ・カルティエ=ブレッソンのもっとも著名となった写真集『決定的瞬間』のフランス語の原題は、Image à la sauvette「逃げ去る映像」である。色彩もまた逃げ去り、無限の色景を生んでいる。それを追うのが写真家であろう。

風景は動き、視点や身体もまた移動している。歩行して変わる風景はシークエンスになっており、瞬間瞬間に立ち現れるイメージを捕まえられるのは、写真家の目と技術のなせる技である。

関連文献

逃げ去るイメージアンリ・カルティエ=ブレッソン

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