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書店はなくなって本は残るか?「書店のない自治体」三木学

www.yomiuri.co.jp

書店が一軒もないという自治体が増えているという。書店がなくなるということを身近なこととして感じたのは2年ほど前くらいだろうか?近所のレンタルビデオ屋兼書店が突然潰れることになった。その後、駅前に2店舗出していた書店の1店舗が潰れた。

 

それによって、自分の知識を得る収集力はグッと落ちたことを実感した。書店の本棚を見ればだいたい何が流行しているか直感的に把握できるからだ。かつては都市の中心部にある会社に通っていたので、何軒も書店をはしごすることが可能だったことを思えば、隔世の感がある。しかし、都市の中心部の書店も、移転したり、潰れたり、新業種の書店が出来たり変化が激しい。

 

そして、記事にもあるように、書店にかなりのダメージを与えているのは消費税だろう。消費税が8%になってから売上の落ち込みは激しいようだ。しかし、書店が競争している相手はもっと別のところにもある。もちろん、一つはアマゾンのような通販サイトで、もう一つはスマートフォンだろう。

 

すでに書店は実質上、ショールーミング化していたところがある。ショールーミングとは、商品のショールームのように機能し、実際はアマゾンなどの通販サイトで購入されることを指す。例えば、書店で読みたい本を発見したけども、本が重いので家まで運ぶのが面倒であるとか、定価が高いのでアマゾンのマーケットプレイス(中古本)やヤフーオークションで購入するなどである。それでは書店は読者に発見の機会を与えたにもかかわらず、一銭も手に入らないことになる。

 

結果的に書店は潰れ、読者は本との出会いの機会が奪われることが現実化している。この現象が10%になった場合、さらに加速する可能性がある。一つは本の価格の上昇であるが、もう一つは消費税は個人間売買には課税されないので、オークションでの購入がますます増えると予想されるからである。

 

また、情報収集にスマートフォンなどのニュースメディアで十分だと認識している人もいる。雑誌や新聞のようなニュース情報は、かなりウェブやスマホアプリで閲覧できるようになっているため、わざわざ書店で雑誌を購入する必要がなくなっているということもある。スマートフォンの通信費はニュース情報も込みだと認識されているだろう。

 

しかし、通信販売はクレジットカードが必要であるし、スマートフォンも口座からの引き落としになっている。クレジットカードを持っていなかったり、銀行口座のない子供の場合、書店がなくなれば、図書館くらいしか本と出会う場所はなくなってしまうだろう。

 

その最後の砦である図書館も問題を抱えている。最近では、図書館や美術館、博物館などは、指定管理者制度によって、行政が民間に運営を委託しているケースが増えている。例えば、佐賀県の武雄市図書館では、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者となり、蔦屋書店やスターバックスを併設する図書館として話題となっていた。しかし、当時CCCの子会社であった古書大手ネットオフ等から、約1万冊、古い実用書を購入していたことで批判を浴び、社長が異例の釈明をすることになった。

www.huffingtonpost.jp

 

問題は古書店から購入することで購入費を安く抑えたこと、それ自体も品質の問題はあるが、もっと大きな問題は、古い実用書のような誰も読まないような本で水増しした疑いがあることと、購入先が自社のグループ会社であったことである。しかし、新刊が購入されなくなることで、書店や出版社、作者に利益が還元されなくなることの方が問題は大きい。

 

マーケットプレイスなどの中古本や、図書館はそもそも新刊本の売上を阻害しているところがある。そもそも図書館が半ば公的な貸書店となっているにもかかわらず、購入先が古書店であったなら、ますます出版社の売上は減退するだろう。結果的に良い本は減ってしまうことになり、長い目で見れば読者のためにはならない。

 

日本の出版業界は、再販価格維持制度によって定価販売が許されてきた数少ない業種である。書店も買い取りをしなくて、一定期間なら返却が可能であり、新刊を揃えることができたということがある。だから、全国のどこの書店でも良くも悪くも似たような品揃えになっていた。しかし、一方で薄利多売であるため、ウェブメディアの台頭により、維持が難しくなってきている。

 

出版社も同様に苦しい。取次を介することで全国津々浦々に配本することは可能だが、返却が可能な分、売上の確定は遅く、当面の資金繰りをするために出版点数を増やすという傾向がある。しかし、再販価格維持制度は、ブックオフやマーケットプレイス、オークションの登場によって実質的に、定価販売ではなくなっている。それなら自分たちで再販価格維持制度の範疇外の電子書籍を今よりもっと安くして売った方が利益になるだろう。

 

作家やライターも同様に苦しいが、人気のある作家はメールマガジンやサロンなど、ファンクラブ的な囲い込み型のビジネスに移行している傾向もみられる。

 

消費税が10%を超えたとき、書店の数はもっと減ると思われるが、出版社も同様に打撃を受ける。ただ、紙による本ではない文字や画像の情報メディアは増えており、何をもって本とするのかは難しいところだろう。電子書籍の実体は、htmlの変形であり、課金とデバイスだけの問題でウェブとの本質的な差異はそれほどない。また、最近ではツイッターやブログで人気が出たから紙の本や電子書籍になるケースも多い。だからその違いは、フローかストックか、無料か有料か、電子か紙かだけの違いかもしれない。それらを含めた広義な意味では「本」は増え続けているし、書店がなかくても拡張はしていくだろう。

 

しかし、子供がたくさんの本を読める環境にするためには、電子デバイスやネット環境がない状態でも読めなければならない。それは紙の本がもっとも完成度が高い。紙の本とウェブでは理解の深みが違うことはすでに実験から分かってきている。電子メディアだけに頼るのは子供にとっても大人にとってもよくはない。最後の砦は図書館になる可能性は高いが、希少本以外は、図書館が新刊を購入することは前提にしなければならないだろう。

 

ただ、このような状況下で、少部数で直売型の出版社や、個性的な書店も少しずつ増えているのも確かである。また、アメリカでは独立系の書店が最近また増えてきているという。紙と電子の相互の利点と欠点について読者が理解し始め、読み分けるようになったともいえる。出版事情の違うアメリカと同列に語ることはできないが、消費税が10%になった後、書店も出版社も新たな形を模索しなければならいだろう。電子書籍においては読み方も変わるかもしれないし、紙の本は読み方は変わらないかもしれないが、作り方はかなり変わる可能性がある。書店も出版社もしばらくは模索の時期が続きそうである。

gendai.ismedia.jp

 

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