「色名を認知するメカニズム」三木学
色空間分析
色名分析
「フランスの色景」では、写真の色を色空間に分布させて配色を分析し、その中に含まれる色名の割合を抽出している。それが、見ている人に何等かの発見をもたらすのは、人間の色彩情報処理の機構(色覚メカニズム)と類似しているからかもしれない。
色覚メカニズムは、網膜から視神経で伝送され、視神経交差で両眼の情報が合成される。その後、外側膝状体で中継されたのち、大脳視覚野(V1)に至る。そこから、色や形、動きを処理する部位に情報が分配され、色は主に視覚前野(V4)で処理される。その後、側頭葉の下側頭皮質(IT)に至り、色が初めて知覚され、基本的な色名の情報処理も行われる。
スナップショットという非常に早い瞬間の判断において、色がどこまで知覚されているかも把握されていない。しかし、色の情報から色名へと変わる過程はある程度判明している。「フランスの色景」は、色の知覚から色名を認知する過程を別の方法で視覚化しているといえるかもしれない。見た人が発見するのは、その認知の構造そのものだといえるだろう。
ちなみに、そようのな色覚メカニズムとCIE(国際証明委員会)の制定した色空間は、眼と脳の仕組みの理解とともに進化してきた。錐体はCIEXYZ(1931)、水平細胞以降はCIELAB(1976)、大脳皮質はCIECAM(2002)に相当している。「フランスの色景」の色名分析で使っている色空間は、CIELABであるが、色名と対応するものとして、CIECAMを利用すればさらに精度は高くなるかもしれない。
参考文献